返答率90%超を維持し、問い合わせメールを最大13%削減。
バンダイナムコグループのバックオフィスを支える「シナリオ型×生成AI」のハイブリッド運用とは

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世界中に「夢・遊び・感動」を届けるバンダイナムコグループにおいて、その経営基盤を支える役割を担う『株式会社バンダイナムコビジネスアーク』(以下、バンダイナムコビジネスアーク)。同社は人事・経理財務・情報システム・総務といったコーポレート機能を担うシェアードサービスを提供している。

数多くのグループ会社のコーポレート機能を担う同社では、2021年に問い合わせ工数などの業務負荷軽減を目的としてサポートチャットボットを導入。土日も営業している店舗から本社への問い合わせや、複雑な規定が多い海外出向者からの問い合わせなどに対し、シナリオ型と生成AI機能を組み合わせたチャットボットの活用によって業務効率化を図っている。ここでは、サポートチャットボットの活用で問い合わせ件数を削減した同社 人事部の丸山氏に、導入背景から運営方法、具体的な成果などについて伺っていく。

株式会社バンダイナムコビジネスアーク 人事部 GMプロジェクト フィールドリーダー 丸山 理通氏
株式会社バンダイナムコビジネスアーク
人事部 GMプロジェクト フィールドリーダー
丸山 理通氏

課題

電話での問い合わせや、店舗からの土日の問い合わせが業務の負担になっていた
定型の問い合わせを減らすために、サポートチャットボットを導入

バンダイナムコビジネスアークがチャットボット導入に踏み切った背景には、問い合わせ対応の工数削減という明確な目的があった。当初のターゲットは『株式会社バンダイ』と『株式会社バンダイナムコアミューズメント』の2社だったという。バンダイでは電話などの直接的な問い合わせを減らすこと、バンダイナムコアミューズメントでは土日も営業している店舗からの問い合わせに24時間対応できる環境を整えることを考えていた。

具体的に削減したいと考えていた問い合わせについて丸山氏は「問い合わせの内容には、有給申請や入社関連、結婚などのライフイベント、勤怠、福利厚生、健康診断や人間ドックといった健康推進業務、年末調整など多岐にわたります。その中には定型的な問い合わせが多く、それらをチャットボットで答えられるようにしたいと考えていました」と振り返る。

株式会社バンダイナムコビジネスアーク 人事部 GMプロジェクト フィールドリーダー 丸山 理通氏

バンダイナムコビジネスアークは多数のグループ会社のコーポレート機能を担っており、問い合わせ数が多いという課題にとどまらない。店舗勤務が基本であるバンダイナムコアミューズメントでは、パソコンやスマートフォンを支給されていない人もいるため、電話での問い合わせとなる。その場合、自身のタイミングで対応できるメールと異なり、問い合わせを受ける人は目の前の業務が止まってしまう。そこで、チャットボットでの自己解決を促せれば、業務負担を大きく減らせると考えたのだ。

チャットボット導入にあたり、丸山氏は製品選定プロセスにもこだわった。複数の製品を比較したうえで、自社に最適なものを選ぶことを重視したのだ。各製品に対してスコア評価を実施し、使い勝手や費用面などを総合的に判断した結果、サポートチャットボットが選ばれた。「サポートチャットボットは、使い勝手と費用面が優秀でした。リクエスト数に応じて費用が決まる製品もありましたが、サポートチャットボットはどれだけ使っても固定の料金です。リクエスト数では毎月の費用感が見えないため、固定料金であるサポートチャットボットは安心して使えると感じました」と丸山氏は教えてくれた。

解決策・運営方法

シナリオ型と生成AIモードの併用で回答精度の向上と管理工数の削減を実現。グループ会社ごとに異なるマニュアルもカスタムチャット機能で個別に対応

まずシナリオ型チャットボット作成のためのQ&Aを構築する際、丸山氏が意識したのはチャットボットを「最終回答」ではなく「道しるべ」として位置づけた点だ。「チャットボットに全ての規定をまとめるのは難しいですし時間も足りません。そのため、チャットボットでの回答が難しい内容については『ここを見てください』と参照先を示す「道しるべ」を提示できれば十分だと考えました。全てを集約する構築に多大な工数を割き、運用に手が回らなかったら意味がありません。目的と手段を間違えないように意識していました」と丸山氏は語る。

このように、グループ各社での導入を進める中、Q&Aの整備・登録・管理の工数が新たな課題として浮かび上がってきた。そこでバンダイナムコビジネスアークは、生成AI機能とシナリオ型のハイブリッド運用に切り替えるプロジェクトを開始した。このプロジェクトにおいて活躍しているのが、生成AIモードのカスタムチャット機能だ。カスタムチャット機能では、ポータルに登録されているマニュアルや規定などのドキュメントファイルを管理画面からアップロードすることで、チャットボットがそれらをもとに質問への回答を自動生成してくれる。

アップロードしたファイルをもとに回答を生成するカスタムチャット機能

丸山氏は「私たちがサポートしている会社は、グループ会社とはいえ各社でマニュアルに若干の違いがあります。そのため、会社ごとのカスタムチャットを作成すれば、所属する会社の規定に沿った回答を得られるようになります」と、カスタムチャットとの相性の良さを語る。

中でも、複雑な規定が多い海外出向者向けのチャットボットについては、生成AI機能のみで運用を始めたという。丸山氏は「渡航するときに家族を帯同するのかしないのか、しない場合だったら国内に残る家族はどうなのか、セカンドカーを購入するときの手当はあるのかなど、海外出向者向けの規定は複雑です。さらにバンダイナムコグループでは、海外から別の海外へ出向するケースなどもあり、その問い合わせに対してマニュアルから自動で回答を生成してくれる機能にはとても助けられています」と教えてくれた。

また、丸山氏は人事部として回答の正確性にも注意を払っている。特に人事規程や報酬に関する内容では、インターネットから標準的な回答を引いてくることは許されない。「人事部として間違った回答をすることは、ユーザーの不利益となります。そのため、生成AIが正しい回答を表示することを必須としてプロンプトを定義し、登録した内容だけから答えるように設定しています」と丸山氏は教えてくれた。

カスタムチャット設定時に、意図した回答が生成されるようプロンプトを登録

カスタムチャットの活用を進める上で、丸山氏は回答精度を上げるためにファイル管理にも細心の注意を払っている。例えば就労系のファイルが複数に分かれていた際は1ファイルにまとめ、ページ数も100ページ以内に調整したという。

生成AIの回答精度を上げるためファイルを整えてから管理画面にアップロードする運用に

また、社内での運用ルールも策定している。「回答精度を上げるためにファイルのページ数を少なくすることや、情報の鮮度を保つためにファイルの更新時はすぐに差し替えるといったルールを設けました」と丸山氏は語る。生成AIモードではファイルを差し替えるだけで最新の内容にもとづいた回答をしてくれるため、管理工数の削減に大きく役立っているようだ。

成果

返答率は90%超を維持し、問い合わせメールは最大13%削減
生成AIモードによって管理側の工数も削減されている

サポートチャットボットの導入により、バンダイナムコビジネスアークでは返答率90%超という高い水準を維持している。特に注目すべきは、問い合わせの削減だ。シナリオ型の運用のみの段階で、人事システム関連の問い合わせが導入前後でバンダイナムコエンターテインメントでは7%削減、バンダイナムコアミューズメントでは13%削減と、実用的な成果が確認された。この削減効果を得られた要因の1つとして、丸山氏は「定期的な見直し」を挙げている。「バンダイナムコエンターテインメントで見直しをしようとの声が上がり、Q&Aの追加やシナリオの更新などをしました。サポートチャットボットは手を加えることで確実に成果が出るので、定期的な見直しは必須ですね」と丸山氏は感じている。

また、生成AIモードを利用することで、管理者側の工数削減という成果も得られている。「Q&Aを新たに作る必要がない点は嬉しいですね」と丸山氏が語るように、シナリオ型では新しい質問パターンが出てくるたびにQ&Aを追加・調整する必要があったが、生成AIモードではファイルを差し替えるだけで最新情報が反映される。改善が効率化されたことで、最新情報が見つかる状態を維持でき、その結果としてユーザーの利用率向上にも繋がっている。特に年末調整や制度変更など、頻繁に情報が更新される領域では、この利点が際立っているという。

カスタムチャット機能を利用したシナリオ型と生成AIモードのハイブリッド利用

丸山氏は今後について「将来的には、生成AIモードだけで運用できる形にしたいと考えています。そのために『AIが読み取りやすいマニュアル作り』をルール化していきたいですね。また、現在は人事や総務が中心ですが、情報システム部門のマニュアルなども統合していきたいと考えています。PCのトラブルやツールの使い方は、会社が違っても共通の内容となるため、生成AIとの相性が良いはずです」と語る。

ユーザーの立場から見ると、問い合わせ内容によって「人事」「総務」「情報システム」など、問い合わせ先が異なるのは親切ではない。バンダイナムコビジネスアークでは、サポートチャットボットの展開を進めることで、困った時に相談すれば的確な回答や問い合わせ先を示してくれる"窓口"としての機能を期待しているのだ。