自社製品のお問い合わせを導入後わずか1ヶ月で1/3に激減!ワードクラウドから把握できるお客様の“生の声”が新たな気付きのきっかけにお客様の引き合いをチャットボット経由で営業へパスするという期待以上の働きも

1917年設立の旧『日本電池』と1918年設立の旧『ユアサコーポレーション』が2004年に統合して誕生した『株式会社 GSユアサ』(以下、『GSユアサ』)。100年を超える歴史の中で、新たな電池の価値を生み出し技術革新をリードしてきたパイオニア企業で、自動車電池、産業電池電源、人工衛星やロケットなどに搭載される高性能な特殊電池など、その活用の場は多彩で全世界でトップクラスのシェアを誇る。

世界19カ国・37拠点(2022年3月現在)に開発・生産・販売拠点を置く『GSユアサ』の優れた技術力は“エネルギー・デバイス・カンパニー”として、常に社会に新たな価値を創造し続けている。一方で、注力をしているのが社内におけるDX推進。ここでは、同社の産業電池電源事業部で顧客対応のDX化をめざして導入されたサポートチャットボットの活用事例を紹介していく。

株式会社 GSユアサ 産業電池電源事業部 品質保証本部 TQM推進部 カスタマーセンター リーダー 坂田 昌継 氏 担当部長 摺木 省治 氏
株式会社 GSユアサ
産業電池電源事業部 品質保証本部 TQM推進部
カスタマーセンター リーダー 坂田 昌継 氏
担当部長 摺木 省治 氏

課題

カスタマーセンター4名の応対品質と顧客満足度の向上を実現するために選んだツールがサポートチャットボット!先行して導入した社内用チャットボットでの成果実績が後押し

今回お話を伺った産業電池電源事業部・品質保証本部では、停電時に電力を供給する『汎用ミニUPS』や『太陽光パワーコンディショナ』など、産業用蓄電池製品、電源装置など多岐にわたる製品に対してのお客様問い合わせに対応している。電話での問い合わせは増え続けており、2022年は年間で6000件以上の電話問い合わせに4人で対応していたという。当時の様子について坂田氏は「1日に20〜30件の問い合わせがあり、しかも重複した内容のお問い合わせが多かったです。特にスーパーのレジやパソコンの停電対策に多く設置されている『汎用ミニUPS』については、警報に関する内容や交換バッテリーのお見積り依頼、廃棄方法の問い合わせが山のように相次いでとにかく電話対応で疲弊してしまう毎日でした…周囲からは“毎日同じことを伝えていますね”と言われていました」と苦笑い。

問い合わせ内容は、取り扱いの説明と仕様確認がほとんどで「電話が繋がらないまま諦めてしまったお客様もいらしたと思うんです。バッテリーの購入を考えていらっしゃるお客様も多くいたのではと想定すると、売上の機会損失も多くあったと思います」という。また、「受話器を取るまで、どの製品に対するお問い合わせなのかが分からないというのも問題でした。お問い合わせのたびに素早く資料を探して適切な回答が求められる上、担当者によって回答レベルに差が出ることも問題だと感じていました」と坂田氏によると当時の課題は山積みだったという。こうした課題を解決するべく選んだツールが、すでに社内で成果実績のあったサポートチャットボットだった。

「2022年の春頃に、情報システム部からサポートチャットボットを紹介されたところ、“こんなエエもんがあるんか!”とね(笑)。これなら同じ内容のお問い合わせをAIによる自動回答で削減しながら、電話応対と顧客満足度の向上を狙えると考えたんです」と導入を即決したという坂田氏。同年10月よりチャットボットの運用をスタートした。(GSユアサ 情報システム部 導入事例はこちら

解決策・運営方法

ワードクラウドでお客様の“生の声”を可視化!トレンドワードが新たな気付きのきっかけとなり次世代の商品開発の一助にも

導入にあたり、まずはQ&Aの数が最も少ない『太陽光パワーコンディショナ*』からチャットボット化することに決定。『太陽光パワーコンディショナ』の使用方法、保守メンテナンス、買い替え・購入などの問い合わせに特化して100件程度のQ&Aからスモールスタートすることにした。管理画面の使用感について、「実はデジタルには疎いです」と笑う摺木氏が「私のようなデジタルに馴染みのない人でも、直感的で感覚的に使えています。本当に誰でも簡単に操作できる管理画面なんです」と話す。これまでは、電話問い合わせの内容をメモに取る作業が発生していたが、サポートチャットボットでは問い合わせの履歴が自動で蓄積されるため、会話履歴や利用統計などのグラフ化、レポート化も自動でできるようになった。

*太陽光パワーコンディショナ:太陽電池で発電された電気を家庭などの環境で使用できるように変換する機器

摺木氏は「面白いのは“ワードクラウド”ですね。市場のお客様が今、何に興味をお持ちなのかが一目でわかるんです。意外にも“補助金”というワードが抽出されるなど、これまで考えたことのなかったお客様の“生の声”に気づくことができますね」と語り「次世代の商品開発の一助になる」とも。

ワードクラウドで図示されたワードから会話経路を分析することで、「ホームページに載せていない新製品の問い合わせがチャットボットに集中していることがわかったり、バッテリーの交換時期が近づいている製品の問い合わせが増えていたりなど、通常では見落としがちなお客様のニーズから、新製品のアプローチタイミングや、旧製品の買い替え時期なども見据えることができ、トレンドワードから次なる展開を見定めることもできそうだと感じています」と摺木氏。

スコアの値に応じて文字の大きさを図示してくれるワードクラウド。「お客様のニーズや問い合わせの傾向が可視化できるたいへん面白いツールです」(摺木氏)

チャットボットのアイコンには、オリジナルキャラクターの「ちくでんくん」を採用し、デザインにも工夫を凝らしている。「お客様に向けてチャットボットを公開するにあたり、広報部門と打ち合わせをしたとき、ユニバーサルデザインを考慮した配色にしてはとアドバイスを受けました。当初はコーポレートカラーをベースに目立つデザインで進めていたのですが、こうした背景から文字を見やすく、落ち着いた色合いに。いかに多くのみなさまに使っていただけるか、使い勝手と見やすさに特化しました」と坂田氏が説明する。

成果

自社製品のお問い合わせを導入後わずか1ヶ月で1/3に激減!
お客様の引き合いをチャットボット経由で営業へパスするという期待以上の働きも

成果は運用開始直後から現れ、『太陽光パワーコンディショナ』関連の1日あたりの問い合わせ電話の件数は3分の1に激減した。アクセス数を確認すると返答率も97.3%と高いアベレージを誇っている。坂田氏は「チャットボットの稼働率は想定以上で、問い合わせ件数の削減に加えて、課題として掲げていた応対品質と顧客満足度の向上も改善できていると考えています。また、社員がチャットボットを利用することも多く、まだ業務経験が短い人にとっては、“ちくでんくん”が何でも答えてくれる良き先輩として活躍してくれています。チャットボットは24時間いつでも同時に何件もの問い合わせ対応が可能ですし、さらに、一度教えた回答は絶対に間違えないので不正確な回答も防止できるようになりました。問い合わせに回答できないことによる、ご購入やバッテリーの交換の機会損失も回避できているのでは」と胸を張る。

さらに、チャットボット経由でお客様からの引き合いを営業担当へと引き継いだケースもでてきているという。「会話履歴の分析をしていて気づいたのですが、『太陽光パワーコンディショナ』の製品情報から遷移してお問合せフォームにご相談が入ったお客様がいらっしゃいました。経路分析をすることで、どの製品にご興味があるのかがわかるので、営業担当者へ繋いだところ、お見積り対応へと話を進めることができたんです!“ちくでんくん”経由で引き合いがくるのか!と驚いたケースでしたね」と話すのは坂田氏。今後は未導入の製品にもチャットボットを設置し、「それぞれの製品に専門特化したコンシェルジュのようなチャットボットになっていけばいいですね」とは摺木氏。

他にも、「ちくでんくん」が活躍した事例を紹介すると、2023年1月24日夜に関西地方を襲った大雪の日には、チャットボットへのアクセスが殺到したという。アクセス数の激増を見た坂田氏は、チャットボットのトップページに積雪時の注意事項を掲載して対応したという。「ホームページへの掲載は困難ですが、“ちくでんくん”なら簡単に更新でき、注意喚起をトップページに設置することができるので、災害時や猛暑時などの緊急情報発信にも活用できると思いました。電話がつながらなくても“ちくでんくん”で対応できるのは大きな強みです」

運用からわずか数ヶ月で想定以上の成果を出したという同社のサポートチャットボット導入によるDX施策。今後についてもお話を伺った。坂田氏は「『太陽光パワーコンディショナ』でこれだけの効果が得られたので、次に問い合わせの多い『汎用ミニUPS』をはじめとして、すべての製品にサポートチャットボットを導入したいと考えています。また、バッテリーには廃棄時に細やかな対応が必要なのですが、こうした注文書や受取書の介在する作業も、“ちくでんくん”でできないか…などDX化の可能性が広がったと感じています」という。

摺木氏は「DXはお客様に付加価値を差し上げることだと思います。お客様に「ありがとう」と言っていただく事が顧客満足度の到達点です。サポートチャットボットは、使いやすい上に顧客満足度を高めてくれる…まさにお客様目線の取り組みを深めてくれるツールだと感じています。先に坂田が話したように、お客様の引き合いを営業へとつなぐ可能性もありますし、今後は他部署ともデータの共有をしながら、営業だけでなく製品開発など他部署間とのシナジーも得られるのでは、と期待しています」と展望を語った。

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