運用体制とQ&Aの設計を見直し、チャットボットのリニューアルに成功!導入当初課題だった利用率は5倍に改善。社員からのリクエストとその後の改善の可視化に努め、全社員のほとんどが利用するチャネルに成長した秘訣とは?

1994年の創業以来、中古車買取のパイオニア『ガリバー』ブランドを中心に、中古車販売でもリーディングカンパニーに成長し、日本全国で445店舗(2022年2月決算時点での直営店舗数)を展開する『株式会社IDOM』(以下、『IDOM』)。自動車流通業界の変革に“挑む”ことへの思いを示した社名通り、大型展示場での心踊るクルマ選びを提案する『WOW!TOWN』、輸入車を専門に取り扱う『LIBERALA』など、新しいタイプの業態を創出し続けている。

さらに、近年は、整備工場や鈑金工場を併設したワンストップ型の超大型店舗を出店し、車の販売、買取だけでなく、その後のアフターサービスの充実へ精力的に取り組んでいるほか、自動車保険とオートローンを組み合わせた『ほけろん』などの付帯サービスの開発にも力を入れている。ユーザーのニーズに応える次世代を見据えたサービスが多様化・拡充する一方で、課題を抱えていたのが店舗から本部への問い合わせの増加だ。細やかな対応が必要となる店舗からの問い合わせにスムーズに対応するべく導入されたサポートチャットポットがいかにして活用されているのか。運用開始後の課題や、それを克服するために工夫したポイントなどについてお話を伺っていく。

株式会社IDOM
株式会社IDOM
事業管理チーム 事業管理推進セクション
林 玲子 氏
京極 大輔 氏

導入のきっかけ

中古車ニーズの変化にあわせて店舗オペレーションも複雑化。店舗からの問い合わせ増加と、各部門の対応の属人化の打開策としてサポートチャットボットを導入!

多様化する中古車のニーズをいち早くキャッチし、魅力的なサービスを開発・展開し続けている『IDOM』。外車専門店やアウトレット店など多彩な店舗スタイルで成長する一方で、それぞれの店舗のスタイルに合わせてた業務オペレーションは複雑化。各種マニュアルや資料は社内ポータルサイトにて公開しているものの、店舗のスタッフは求めている情報回答に行き着けず、各店舗から本社への社内問い合わせは繁忙を極めていた。

今までは、全社員からの問合せを各部署でフォームやメールで個別に対応しており、回答の手法も部署によってさまざまだったため、店舗側からすると問い合わせの仕方が分かりづらい状況だった。また、問い合わせを受ける各部署でも、事業の拡大や、店舗チャネルの増加に伴い、知識の属人化や業務習熟時間の延伸が起こり、社員によって対応や返答が異なっていたり、回答までに時間を要するケースも発生していた。

そこで、店舗からの問い合わせを1箇所に集約し、店舗運営サポートの効率化と均質化を図るため、2019年4月にサポートチャットポットを導入した。しかし、導入当初は期待していたほどチャットボットがうまく機能していなかったという。

課題

メンテナンス不足の課題解決のために運用体制を見直し。
ユーザーにとっての使いやすさを第一に考えたQA設計を目指しチャットボットのリニューアルに着手!

チャットボット導入初期について、新入社員として店舗での業務に携わっていた京極氏は「店舗ごとに専門性が高い業務が多いのでマニュアルは必須なのですが、当時はチャットボットを使っても、回答ページのリンク切れも多く、また思うような回答にたどり着けず機能していないと感じていました」と振り返る。当初は、利用率など数値を見ながら簡単に分析・メンテナンスを行えていたが、担当の変更があり、十分なメンテナンスがされなくなってしまったり、各部署にメンテナンス作業を一任していたところ、次第に優先順位が下がり、後回しにされてしまっていたという。

そこで、チャットボットの運用体制に課題を感じていた林氏は、2021年にサポートチャットポットの運用体制の見直しとリニューアルに乗り出す。「当初はチャットボットを導入することだけが目的になってしまって、運用体制とメンテナンスが不十分になっていたんです。そこで運用の質を高めるために、業務管理チームが責任を持って運用する方針へとシフトしました。その際に、店舗で使いづらさを体感していたメンバーに現場の意見を聞きながらチャットボットの立て直しを図りました」(林氏)

まずはマニュアルとすでにチャットボットに登録しているQ&Aをすべて見直した上でカテゴリの追加・修正を重ね、各部署に届いている質問から多く寄せられているものをQ&Aに追加するなど集中的に改修を行った。その中で京極氏が着目したのが「一問一答」の活用だったという。「一問一答」はシナリオフローとは独立したQ&Aの登録枠で、フリーワード検索からシナリオフローを経由せずに、直接回答にたどり着くことができる。「せっかく時間をかけてQ&Aを整備したところで使ってもらえなければ意味がないという中で、一問一答でリレーションを組んでおけば、一発で求める回答にアクセスすることができるのは大きな利点と考えました。質問をする際の工数削減と、アクセスの至便さを追求することで、使いやすいものにしようと考えました」と京極氏はリニューアルの方向性について語る。

解決策

キャラクターアイコンの活用や、チャットボットへのリクエストとその後の改善を”成長日記”として可視化。 社員みんなで『ガリ坊』を“成長”させる仕組みづくりに成功!

チャットボットのリニューアルによって利便性が高まった代表例が「店舗検索」での活用だ。同社では店舗間での電話連絡や郵便物が多いため、頻繁に他店舗の情報を検索するという。「そこで、大規模データ検索機能*を利用し、全店舗の情報を一問一答で検索できるよう機能を追加しました。これまでサポートチャットボットを使っていなかった社員でも、店舗検索を便利機能として使うきっかけになればと考えました」(林氏)

*大規模データ検索機能:チャットボットに直接Q&Aとして登録してしまう膨大な量になってしまう店舗情報や商品の一覧などの大規模なデータを、チャットボット本体に登録しているQ&Aとは別に登録や検索ができる機能。

さらに、チャットボットの利用を広めることを目的に、アイコンのキャラクターも一新。「AIチャットボットなので、多くの人に使ってもらうことで成長できるように、“みんなで育てましょう”をキャッチコピーにし、親しみやすいキャラクターとして、15年ほど前に弊社のイメージキャラクターとして使っていた『ガリ坊』を採用しました。また、『ガリ坊』からのお知らせや更新情報は月一回ほどの『ガリ坊成長日記』として、社内ポータルサイトのトップページに掲載しました」と林氏は工夫を語る。

『ガリ坊』は若い世代の社員には真新しく、上の世代には懐かしい印象になり幅広い世代へのチャットボットも認知拡大につながったという。アイコンの表情やポーズに変化をつけるなど、目を引く工夫したことで社内浸透に貢献した。

『ガリ坊成長日記』では、Q&A更新のきっかけとなった店舗からの意見やリクエストなどを公開。『ガリ坊』を通じてチャットボットについてのフィードバックやその後の改善を可視化できるようになり、回答率の向上にもつながったという。「意見を出してくれた社員にとっては、リクエストしたことが反映されると嬉しいですし、みんなで『ガリ坊』を応援しようという風潮も広がったと感じています」(林氏)。『ガリ坊』を通して社内コミュニケーションも深まり、社員がチャットボットの利用価値に気づくきっかけにもなったという。

また、継続して利用してもらうためには日々のメンテナンスも大切だ。チャットボット内で表示しているフォームに届いた問い合わせ内容や要望などは、RPAと連動させて自動集計し、各事業部担当者へ確認を行い、新規追加・修正作業の管理工数を削減するなど運用体制も見直したという。

成果

導入から2年半で月間利用者5倍、社員のほぼ100%が利用中!社員からのリクエストをもとに改善を重ね、未解決数も4分の1減少。店舗社員の中で口コミが広がるほどに!

さまざまな工夫の甲斐あって、2019年の導入から2年半で月間利用者は5倍にまで増加した。「Q&Aを充実させて、カテゴリを見やすくしたことで使い勝手が良くなったことが一因と感じています。また、利用者からのリクエストの修正・改善を重ねたことで回答の質も向上し、未解決数は4分の1に減少、リピート率も2倍になりました」と笑顔を見せるのは林氏。また、チャットボットのトップには『ガリ坊へのリクエスト』フォームも設置。「月に50件ほどのリクエストや意見が届いていますが、修正や追加が必要なものは即対応しています。チャットボットの利用が進んだことで、これまで非常に多かったマニュアルを読めばわかるような質問は激減し、直接対応が必要な個別の質問がほとんどです」と問い合わせ対応業務の削減にもつながっているという。

京極氏は「店舗で勤務する社員から、『ガリ坊』が優秀だと口コミで広がっているという話も聞いています。新入社員にも『ガリ坊』を活用してもらうことで知識の定着が早くなったという声も社内から上がっているようでホッとしています。利用者が増え、リクエストも多く集まるようになったことで、未解決率をさらに減らすことができると感じています」と手応えを語る。

今後の展望について林氏は「これからも『ガリ坊』が優秀だと言ってもらえるように継続していくことが大事だと考えています。せっかく店舗から頼ってもらえる存在にまで成長できたので、今後も『ガリ坊』に届いた声を反映しながら、まだ使えていない機能も取り入れつつ工夫を続けたいと考えています」と語った。

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