問い合わせの約4割をチャットに移行!「チャットボット×有人チャット×生成AI」で実現した顧客満足度と業務効率の両立

Share

アイリスオーヤマのグループ会社として、インターネット通販サイト「アイリスプラザ」を運営する『株式会社アイリスプラザ』(以下、同社)。アイリスオーヤマの商品を中心に約10万点の商品を取り扱い、近年では政府備蓄米の販売を手掛けるなど、事業規模は年々拡大を続けている。

しかし、取扱商品数の増加やコロナ禍によるEC需要の急拡大に伴い、同時にお客様からの問い合わせも増加。従来の電話やメールを中心とした体制では増大する問い合わせに十分に対応することが難しくなっていた。この課題を解決するため、同社はお客様がいつでも自己解決できる環境の整備と、オペレーターが複数の問い合わせに同時対応できる体制の構築を目指して、ユーザーローカルの「サポートチャットボット」を導入した。

さらに、新商品のFAQ整備や商品仕様に関する複雑な問い合わせに迅速に対応するため、生成AIプラットフォーム「ChatAI」を組み合わせた運用も展開している。ここでは、同社がサポートチャットボットを活用して効率化した方法や、ChatAIを併用した運営体制などについて伺っていく。

株式会社アイリスプラザ アフターサービス部 コンタクトセンターの皆さま
株式会社アイリスプラザ
アフターサービス部 コンタクトセンター
センター長 Y.S氏
統括スーパーアドバイザー S.R 氏
スーパーバイザー S.T 氏
H.N 氏

課題

問い合わせ数の増加で1対1の対応が限界を迎えていた
リアルタイムでのやりとりと、営業時間外でも自動回答できるチャットボットを導入して現場の負担を軽減

同社のコンタクトセンターでは、商品数の増加に伴い、お客様からの問い合わせも増加傾向にあった。限られた人員で対応にあたらなければならず、従来の「1対1」対応では追いつかない状況が続いていたという。当時を振り返り、H.N氏は次のように語る。「問い合わせ件数の増加により、オペレーター1人あたりに求められる処理量は非常に高い水準になっていました。1日あたりメール数百件の処理、あるいは数十件以上の電話対応をこなさなければ問い合わせに追いつけない状況でした。これはオペレーター本人にとっても、指示を出す管理者にとっても、双方に大きな負担となっていました」

株式会社アイリスプラザ アフターサービス部 コンタクトセンター H.N 氏
株式会社アイリスプラザ アフターサービス部 コンタクトセンター H.N 氏

さらにコロナ禍に入ると、状況はより深刻なものとなった。「2週間分の問い合わせが1日で集中するほどの状態で、当時の体制では完全に限界を超えていました」とS.R氏は振り返る。アイリスプラザの利用者には年齢層の高いお客様も多く、クーポンの利用方法など定型的な問い合わせが多数寄せられていた。同社ではコロナ禍以前から、こうした問い合わせの自動化による現場負担の軽減を目的に、IVR(自動音声応答)の導入やサイト上のFAQの拡充に取り組んでいた。それらの施策と並行して導入を検討していたのが、当時注目を集めていたチャットボットだった。手軽に問い合わせができる手段として、導入候補に挙がったという。

複数のチャットボットを比較検討した結果、サポートチャットボットが選ばれた決め手は、料金体系と操作性の高さにあった。Y.S氏は「サポートチャットボットは従量課金制ではないため、費用対効果を算出しやすく、社内での検討をスムーズに進めることができました」と語る。

導入後、サポートチャットボットは現場のオペレーターにも抵抗なく受け入れられた。S.T氏は次のように語る。「従来の電話やメールと異なり、チャットボットはお客様とリアルタイムでやりとりができます。日常的にLINEのようなチャットツールに慣れているオペレーターがほとんどのため、スムーズに浸透しました。新しいツールへの抵抗よりも、お客様にすぐにお答えできるという体験が、オペレーターのやりがいに直結したと感じています」

株式会社アイリスプラザ アフターサービス部 コンタクトセンター スーパーバイザー S.T 氏
株式会社アイリスプラザ アフターサービス部 コンタクトセンター スーパーバイザー S.T 氏

また、チャットボットの導入により、お客様からも好意的な反応が寄せられるようになった。ECサイトの利用者は帰宅後の夜間に注文や確認を行うケースが多く、同社の営業時間外に問い合わせが集中する傾向があった。チャットボットの設置により、時間帯を問わず問い合わせに自動対応できる環境が整ったことで、知りたいときにすぐ回答を得られる利便性が、お客様の満足度向上につながっている。

解決策・運営方法

サポートチャットボットの導入で「チャットボット×有人チャット」の体制を確立
分析データに基づく週次メンテナンスで、オペレーターの教育にも注力

約3ヶ月で導入から運用開始まで完了させた同社がまず取り組んだのは、チャットボットのみに頼るのではなく、有人チャットを組み合わせたハイブリッド型の運用体制の構築だ。よくある問い合わせはチャットボットで自動対応して自己解決を促し、複雑な問い合わせは有人対応へ引き継ぐ仕組みを整えている。現場の具体的な体制について、S.T氏は次のように説明する。「有人チャットは9時半から17時の間で対応しており、担当者を複数名配置しています。1人あたりの同時対応数に上限を設けることで、お客様一人ひとりに丁寧な対応ができる体制を整えています。」

チャットボットの回答精度を高く維持するため、継続的なメンテナンスも徹底して行われている。S.T氏とH.N氏は毎週実績を確認し、シナリオや文言の調整を続けているという。なかでも注力しているのが、未解決件数の削減だ。H.N氏は「データを確認すると、商品に関する質問やクーポンの使い方など、週によって異なる問い合わせの傾向が見えてきます。その都度、お客様が自己解決できるようシナリオを調整しています」と語る。

また、サポートチャットボットで収集できるお客様からの評価も、オペレーターへのフィードバックに活用されている。低評価があった場合は内容をオペレーターと振り返ることを毎週の定例業務とし、高評価を受けた際も本人と共有するようにしているという。H.N氏は次のように語る。「オペレーターが自分の評価をいつでも確認できる環境を整えています。評価が可視化されることは、品質向上とモチベーション向上の両面で効果があると感じています」

オペレーター評価のイメージ
オペレーター評価(イメージ)

運用面では、世間のトレンドに合わせてトップ画面のメニューを変更するといった工夫も行っている。S.R氏は次のように語る。「新鮮な情報をいち早くお客様の目に触れる場所に掲載することを意識しています。25年5月に政府の備蓄米を販売した際は、瞬間的に平常時の46倍もの問い合わせが集中しました。その際も、トップページに表示している項目の順番を入れ替えたり、色を変えて目立たせたりすることで、多くのお客様に必要な情報を届けることができました。サポートチャットボットがなければ、オペレーターが対応しきれないだけでなく、お客様も必要な情報を得られず、双方に支障をきたしていたと思います」。同社では、毎週のメンテナンスを通じて、運用面・教育面の双方を継続的に改善し続けている。

成果

問い合わせの約4割をチャットによる対応へ移行
ChatAIの導入でFAQの作成時間を55%削減し、お客様の最高の購買体験を実現し続ける

サポートチャットボットを導入した結果、現在では全体の約40%がチャット対応となっている。Y.S氏は「導入当初と比べ、利用人数は数倍〜数十倍規模にまで拡大しています。『1対1』から『1対複数』の対応へシフトしたことで、従来の体制ではカバーしきれなかったであろう数万人規模のお客様に必要な情報を届けることができています」と語る。

また、サポートチャットボットの導入は、データ分析業務も効率化した。S.R氏は「以前は問い合わせがあると手動でカウントして、毎日誰が何件対応したかをExcelで記録していました。今ではボタン一つで分析結果を出せることに感動しています。特に、離脱や再検索といったお客様の動きは、電話やメールの手動カウントでは絶対にわからないことでした。分析の精度と粒度が高くなったのはすごくありがたいです」と語った。

しかし、運用が軌道に乗るにつれて、新たな課題が浮上した。商品数の増加に伴い、それぞれに対応したFAQの作成が追いつかない状態だったという。H.N氏は「1商材につき10個の質問を考え、さらにその回答をオペレーターが数多くの資料から作成する業務に手間がかかっていました」と語った。

そこで、増え続ける商品の各仕様に関する問い合わせにスムーズに対応するため、ユーザーローカルが提供する法人向け生成AIプラットフォーム「ChatAI」を導入した。「ChatAIに製品資料を読み込ませれば、即座に10個のFAQを作成してくれます。以前は、1人のオペレーターが1日にFAQを作成できる商材数は10商材が限界でしたが、ChatAIを使えば1日に20〜30商材のFAQを作成できるようになりました」とH.N氏は語った。実際にChatAIが出力するFAQの精度は高く、人による確認は必要なものの、約55%の効率化を実現しているという。

FAQ作成画面のイメージ
FAQ作成画面(イメージ)
FAQ作成画面のイメージ
FAQ作成画面(イメージ)

また、Y.S氏は「問い合わせがあった際、すぐにAIでリサーチできるのも素晴らしいと思います。Webで検索するよりも早く欲しい情報や具体的な事例が得られます」と、ChatAIの情報検索ツールとしての有効性も高く評価している。

ChatAIで増え続ける商品のFAQを作成できるようになったことで、サポートチャットボットでの自己解決をより促せるようになった。H.N氏が「より多くのお客様の困りごとを解決できるようになりました」と語るように、これらを併用することで、社内業務の効率化とお客様の満足度向上を両立できている。

今後の展望について、同社はさらに高い目標を掲げている。S.R氏は「最終的にはお客様向けに生成AIを活用したいです。問い合わせ内容が複雑化しているため、商品の仕様や大型家電の設置ルールといった定型的なものは生成AIを使って回答し、それ以外についてはAPI連携をしてより個別のお客様に深い案内ができるようにしたいと考えています」と語る。同社は今後も「チャットボット×生成AI」による自動化を進め、お客様に最高の購買体験を提供し続けていく。