デジタルとリアルを融合させたコンタクトセンター改革!
“チャットボット×有人チャット×電話”を組み合わせ、お客さまの問合せニーズを即時反映しながら、CS(顧客満足)向上と業務効率化が図れる体制を実現。 コールセンターへの入電数は年間10%程度減、オペレーションコストの大幅な削減も。
郵便局に直営店を加えた2.4万の店舗ネットワークを通して、全国あまねく誰にでも「安心・安全」で「親切・丁寧」な金融サービスを提供し、日本に不可欠なインフラとしての役割を担う『株式会社ゆうちょ銀行』(以下、『ゆうちょ銀行』)。「お客さまの声を明日への羅針盤とする『最も身近で信頼される銀行』を目指す」という経営理念を掲げ、リアルとデジタルの相互補完による新しいリテールビジネスの変革を展開している。その一環として推進しているのが“チャットボット×有人チャット×電話”を相互に組み合わせたコールセンターのコンタクトセンター化だ。
専務執行役・小藤田実氏に伺うと「業務効率化を目指す上で重要な切り札と考えています。その中でチャットボットは24時間365日、効率的にお客さまからのご質問にお答えすることができるなど、お客さま対応を充実・向上させる上でも、業務の本質を変える上でも革命的なツールです。デジタルでの対応を、今後ますます安心・安全に、そしてお客さまに手が届くところまでしっかりとサービス提供できる“思いやりのあるチャネル”にしていくきっかけになればと考えています」とコンタクトセンター化の手応えを力強く語った。ここでは、コンタクトセンター化に欠かすことのできないサポートチャットボットの導入経緯、有人チャットとの相互活用などについて、営業部門コールセンター部の山浦実氏、椛木貴幸氏に幅広く伺っていく。
課題
お客さまにとっての使い勝手の良さ、そして管理者にとっても快適なUI・UXでチャットボット運用の内製化を実現! 改善作業(FAQ・シナリオ等)のベンダーへの委託コストも削減。
郵便局に直営店を加えた2.4万の店舗ネットワークによる対面接客を強みに、親切・丁寧な金融サービスを提供する『ゆうちょ銀行』。『ゆうちょダイレクト』や『ゆうちょ通帳アプリ』といったオンライン上でのサービスが普及する中、電話対応においてもデジタルとリアルを融合したコンタクトセンター化を推進している。その中で重要なピースとなっているのがサポートチャットボットだ。
『ゆうちょ銀行』では2018年12月より段階的にチャットボットを導入。これまで2回(2社)のチャットボット導入経験を経て、2022年4月よりユーザーローカル社のサポートチャットボットの導入を決定した。山浦氏に伺うと「シナリオ型とAI搭載のフリーキーワード検索型の併用が可能で、お客さまが好きな型を選択し、FAQを探しやすくなりました。また、チャットボット管理者にとっても快適なUI・UXで、FAQやシナリオの追加・修正の即時対応が可能になりました」と語る。特に、FAQの追加・修正といった、以前はチャットボットベンダーに委託していた作業を内製化することで、委託コストを削減する狙いもあったという。「これまで委託していたFAQの追加・修正作業を、当行で迅速かつ柔軟に、しかもローコストでできるのが大きな魅力で、これだ!と思いましたね」と山浦氏はサポートチャットボットとの出会いを笑顔で振り返る。
使い勝手の良さについて椛木氏は「管理者の活用スタイルに合わせてオプションを与えてくれる自由度の高さ、しかも機能がシンプルに設計されており感覚的に操作できるので、長く使えるツールだと感じています。FAQ・シナリオの改善も即時対応でき、内製化はほぼ100%実現できています」と語る。また、セキュリティ面についても「細かな確認事項を、ユーザーローカル社の担当者と何度もやり取りを重ねることで、安心・安全に導入することができました」という。
解決策・運営方法
お客さまの“問合せニーズは何か?”
有人チャットでのフィードバックがチャットボット改善の体制整備に一役!
導入にあたっては「運用開始までにシナリオのチューニングや動作確認に時間を要すると考えていましたが、サポートチャットボットは当行でFAQの追加修正が可能で、その結果も動作テストで即時確認できるので限られた期間内でスムーズに導入を実現できました。シナリオ作成やチューニングに関してはユーザーローカル社のサポートがしっかりとしていて、担当者からのお客さま目線での適切なアドバイスも大変役立ちました」と椛木氏。
そんな中で、福岡コールセンターでは、サポートチャットボットの導入とともに、そのシステムを利用し、有人チャット対応を開始。現在では、チャットボットで解決できなかったお客さまを有人チャットで対応している。「チャットボットのユニークユーザー数、会話数、有人チャットを希望するお客さまの件数・割合、有人チャットの対応時間などを集計し、デイリーでレポートを出しています。こうした定量データに加えて、有人チャット対応でのお客さまからの定性評価コメントを踏まえ、チャットボットの改善に活用できています」(山浦氏)
「有人チャットでのやり取りから、回答の用意できていない想定外の問合せが意外と多いこともわかりました。また、『ゆうちょダイレクト』『ゆうちょ通帳アプリ』への質問が多く、ネットやアプリ利用者の問合せニーズを把握する上で、大切な気付きになっています。お客さまの“問合せニーズは何か?”、そして“何が足りないのか?”を汲み取りながら、改善PDCAサイクルを高速回転させ、CS(顧客満足)向上とコールセンターへの入電数削減につなげる役割を有人チャットが担っています」(山浦氏)
お客さまからの“評価コメント”が収集できるのも、有人チャットの大きな魅力だという。福岡コールセンターの篠原氏は「5段階評価でお客さま対応の点数を出すことができ、自由記述コメントでは改善提案や感謝の声も届いています。有人チャット対応でのお客さまからのフィードバックを参考に、より具体的な対応策を取ることができ、有人チャット担当者のモチベーションアップに繋がっています」という。「お客さまの声からES(従業員満足)を高めて、高まったESを原動力に、CS(顧客満足)向上に努めていく、CS-ESを連動させる体制が理想型です」(山浦氏)
福岡コールセンターではチャットボットと有人チャット対応の定量・定性データをダッシュボード化し、日々、東京本社に報告している。その情報は日々、東京本社で運用を担当する椛木氏と共有しており「会話履歴のデータから追加修正項目や、登録単語の検討といった綿密なやり取りを毎日行っています」という。また、チャットボットの分析からも修正項目を洗い出している。「シナリオの経路分析はよく見ています。各階層での離脱率を見てみると、私たちにはわかるけどお客さまには伝わりづらい単語などを分析でき、解決率の向上、シナリオ改善の一助になっています。分析画面はグラフで会話総数や解決・未解決が一目でチェックできるので重宝しています。カテゴリ別にどの質問が増減しているのかを、期間毎にチェックできるのも魅力です。FAQ追加の検討時に大いに参考になります」(椛木氏)
成果
チャットボットの対応範囲を拡大する中で、コールセンターへの入電数は年間10%程度減! オペレーションコストの大幅な削減も実現!
ゆうちょ銀行ではスマホアプリを基軸にサービスのネット完結化を進めており、また、チャットボットの対応業務範囲を拡大することで、コールセンターへの入電数は年間10%程度減少している。「コンタクトセンター構想の実現はまだまだ途上ですが、入電数が目に見えて減ってきているのは嬉しいことですね。加えて、オペレーションコストが大幅に削減できているのが大きな成果です。入電数が抑制されることで、コールセンターで受電対応を行うオペレーターの業務負担を軽減し、捻出した時間の一部をスキルアップ・CS(顧客満足)向上に振り向けられればと考えています」と山浦氏。
椛木氏は「入電数の削減はもちろんですが、チャットボットの運用を内製化したことで、改善スピードがUPし、しかもフレキブルな対応が可能になったことで、CS(顧客満足)向上にもつながっていると手応えを感じています。特に、機能面でお客さまの利便性に直結していると感じているのはAIサジェスト機能です。お客さまがフリーキーワードを入力した際に関連する単語がサジェストされる機能で、お客さまが検索する際の利便性向上につながっていると感じています。私や福岡コールセンター担当者も試しているのですが、お客さま目線でとても検索しやすいと実感しています」と語る。
今後の展望について椛木氏は「チャットボットの更なる利便性向上・利用者数拡大を目指しています。利用者数を増やすためには、チャットボットの効果的な設置場所を増やすことが大事だと考えており、ユーザーローカル社のウェブ解析ツール「User Insight」(https://ui.userlocal.jp/)のヒートマップを分析し、アクセス数の多い箇所へのチャットボットの設置を検討したい」と語る。
山浦氏は「これまでのノウハウを活かし、2022年11月下旬、法人向けインターネットバンキング『ゆうちょBizダイレクト』業務にもサポートチャットボットを導入しました。また、2022年度中を目途に、当行では新しく家計簿アプリのリリースを予定しています。このアプリを始め、今後リリースするアプリにはチャットボットを設置し、アプリ操作画面から最短の導線でチャットボットにアクセスできる環境を整備することで、更なるCS(顧客満足)向上とコールセンターへの入電数抑制が図れると考えています。」と今後の展望を語った。
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