大雪や台風といった有事の際に激増する問合せのサポート体制改善を目指して、サポートチャットボットとAI FAQを同時導入!入電数は前年比58%に削減し、電話応答率も改善。24時間対応可能な新たなお客様サポートチャネルとして大活躍!
JR東日本グループの旅行会社として国内ツアーを企画・販売などを行う『株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス』。地域に根差した旅の魅力を地域の人々と共に創り出していく“観光流動創造会社”であるという思いが社名に込められている。
今回、サポートチャットボットとAI FAQシステムを導入したダイナミックレールパック本部では、旅行のスタイルに合わせて列車と宿泊施設等を組み合わせた価格変動型WEB予約限定の『JR東日本びゅうダイナミックレールパック』、『宿だけプラン』の販売・宣伝・参画施設へのセールス、サポートデスクの運営管理などを行う。
そのほか、主に東日本各地の魅力的な観光情報発信や旅行相談を行う『駅たびコンシェルジュ』の運営、JR東日本のシニア向け会員組織「大人の休日倶楽部」会員向けの旅行サービスや「趣味の会」の運営、クルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」の企画・運営及び運行サポート、インバウンド事業、地域連携事業など事業内容は多岐にわたる。
同本部サポートデスクグループでは、主にコールセンターの運営・管理などを担当。商品に関する問合せ全般に加えて、台風や地震といった自然災害時の際、緊急対応といったサポートも行っている。これまでは、ほとんどの問合せを電話にて対応してきたが、自然災害時など緊急対応が求められる際にもしっかりとお客様にご案内できる体制を整えることを目的として2021年7月にサポートチャットボットを導入した。ここでは導入の経緯から、チャットボットの活用によって得た大きな成果について幅広く伺っていく。
課題
自然災害時など緊急時の先読みできない問合せの殺到によるパフォーマンス低下の課題解決へ
応対品質と顧客満足度の向上を目指して、サポートチャットボットとAI FAQシステムを同時導入!
同社が提供する「JR東日本びゅうダイナミックレールパック」は、新幹線・JRの特急列車と旅館・ホテルなどの宿泊施設等を組み合わせてオンライン予約できる価格変動型の旅行商品で、多彩な旅行商品、快適な旅のサポートが好評を博している。その一方で、問合せ内容は幅広く、2020年のGoToトラベル事業開始時や、大雪や台風といった自然災害時などには電話での問合せが集中していたという。木村氏によると「お問合せに対しては、ほぼ電話でのご案内でした。特にスキーシーズンはいちばんの繁忙期で、例えば“大雪で列車が止まってしまった”や“積雪不足でスキー場が営業していない”といった時期には、通常のお問合せに加えて緊急のお問合せが急増し、増員した受電体制でも対応しきれない状況が続いていました」と当時を振り返る。
電話の繋がりにくさによる顧客満足度の低下は、最も避けるべき事態だ。また、コールセンターの負担が増え続ける中、従業員のモチベーション低下の懸念もあったという。こうした状況において、緊急を要する問合せに集中できる体制強化と、通常時の問合せ対応の自動化を図るべく2021年7月にサポートチャットボットを導入した。並行して、チャットボットと一元管理ができるAI FAQシステムの同時導入にも踏み切った。
「チャットボット、AI FAQシステムの導入前までは一問一答形式のFAQページとお客様にご意見を一方的に投稿いただく“投稿箱”はご用意していたのですが、こちらからご返答できないものでした。サポートチャットボットとAI FAQシステムを導入することでお客様から一方的にご意見をいただくだけではなく、こちらからリアルタイムで回答することも可能になりました。また、複雑だったQ&Aの箇所を精査し、これまで以上にFAQが使いやすくなったと感じています」と語るのは浅尾氏。
また、シナリオの構築について木村氏は「当初は新しいツールの導入ということもあって苦労するかな?と思っていたのですが(笑)、ユーザーローカル社の手厚いサポートと的確なアドバイスに加えて、管理画面上に設置されているチャットボットの「ゆうこさん」による不明点に対する回答スタイルも大変参考になりました。こうした対応もあり、仕組みと修正方法を自分たち自身でも学びながら構築を進めることができました」と語り、現在ではサポートデスクグループメンバー全員で運用を行っているという。
解決策・運営方法
誰もが見やすいグラフで表示される利用統計や未解決回答といったデータをチームで簡単に共有・活用できるように! 効果的なブラッシュアップが可能になったうえ、社員間のコミュニケーションにも大きく寄与!
月に2回利用統計などを確認し、内容の精査と改修を行いながらブラッシュアップ。管理画面から確認できるデータから「お客様がお問合せに対して求めている回答の方向性や質問の傾向などが、メンバー内で共有できるようになりました」と語るのは浅尾氏。さらに「未解決回答を掘り下げることで、“この説明文がわかりづらいかも?”といった意見交換が活発に行われるようになりましたね!メンバー全員で意見を出し合いながら運用できていて、今では気になった箇所を見つけたメンバーからメールが送られてきて即時対応しています。回答の内容に対するメンバーの責任感が培えていると感じますし、社員間のコミュニケーションにも大いに役立っています」と笑顔を見せるのは木村氏だ。
また、問合せフォーム機能も大いに活用している。「例えば、当日の大雪で旅行が中止になってしまった場合に、予約の取消申請をフォームで手軽にできるようになりました。確認・注意事項をチェックボックス化し、お客様ご自身で入力していただけるので、以前であればご返送方法なども含めると電話でのご説明に20分以上ということもありましたが、その対応時間が随分と削減でき、お客様にとっても利便性が高まったと感じています」と浅尾氏。
チャットボットはホームページの右下にポップアップ型のアイコンを設置し、FAQサイトのトップにもiframe(アイフレーム)型でわかりやすく配置。
さらに、チラシなどツアー紹介の媒体に二次元コードを掲載するなど、多くの場所でアナウンスを展開。ユーザーの目に触れる場所への認知施策の効果によって利用者数も徐々に増えているという。
成果
サポートチャットボットの導入によって、入電数は前年比58%にまで削減し、電話応答率も倍近くに改善!新たなお客様への情報発信チャネルとして浸透し、ユニークユーザー数も着実に増加!
サポートチャットボットの導入から1年で大きな変化が見られたのは入電数。2021年には大雪による催行中止、2022年には全国旅行支援事業のスタートと、どちらの年も問合せニーズが高まる出来事があったにもかかわらず、チャットボットを導入したことで、2021年から2022年にかけて、入電数は前年比の58%にまで削減、電話応答率も倍近くに改善された。木村氏によれば「入電数の減少と、電話応答率の向上が如実に成果として現れたと感じています。また、オペレーターとのコミュニケーションも増え、質問の多い内容はチャットボットやFAQへ追加するようになりました。そうすることで、受電からFAQへの誘導という対応も幅広く可能になっています」と語る。
また、「自然災害時など有事の際のダイナくんへの閲覧数がグンと伸びているので、自動応答で解決できている部分がかなり多くあるんだなと実感じています。また、24時間対応というのも、弊社のようなサービスにとっては大きいと感じています。以前は商品購入可能時間はもちろん、ツアーの始発・終電などの時間に合わせて朝の5時40分から23時40分までコールセンターを稼働していたのですが、段階的にコールセンターの受付時間を短くし、現在では10時~18時の営業に。コールセンターの受付時間そのものを短縮できたのは、とても大きな成果です」と浅尾氏。
最後に𠮷原氏からサポートチャットボット導入の手ごたえと今後の展望をうかがった。「もともと弊社では、FAQに慣れていらっしゃるお客様が多かったこともあり、チャットボットとFAQの一元管理ができる点は、とても大きな効果につながりました。有事の際には積極的な情報発信ツールとしての機能も果たしているのでは、と感じています。緊急を要する情報はチャットボットのトップにあげておくことで、これまでほぼ電話でのみのご案内だったお客様に対して先手、先手で情報をお届けできるチャネルが増えたことも大きいと感じています。また、未解決回答に対する深堀りなどは現場社員間のコミュニケーションも増えることに繋がったので、いろいろな意味で”気づき”も出てきましたし、図らずも問題意識へのアンテナの高さや改善に対する前向きなマインドが醸成されていったのは思いがけない喜ばしい変化だったと思います。今後も引き続き、顧客満足度、応対品質、そして従業員満足度の向上を進めながら、新たな旅行商品の展開など変化する内容に即して、臨機応変にチャットボットとFAQの質を高めて、よりお客様の理解と安心感を深められるようにしていきたいと考えています。オンライン上でお客様ご自身によって解決へと導いていただけるようにすることで、更なる入電数の減少と業務効率化につなげることができればと思います。また、ChatGPTを活用した機能など新たに追加される機能にもどんどんチャレンジしていきたいですね」とさらなる機能活用についても語った。
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