路線拡大に伴い、激増する問い合わせ対応をチャットボット導入で10%削減!月8,000件ほどの問合せに自動対応。電話のみでのアナログ対応からチャットボットを併用することで問い合わせニーズのある夜間でも即時対応が可能に!

東京都内の路線バスや新宿・渋谷を中心にした日本各地への高速バスの運行などを運行している『京王バス株式会社』。900両を超えるバスが在籍し、路線バスは東京23区~多摩・高尾方面を中心に数々の路線をカバーし、高速バスは中央道を中心に約30の系統を運行するほか、貸切バス事業など時代のニーズにそったバス事業を展開している。新たなカテゴリーの新車を積極的に導入することも同社の特徴の一つだ。路地でも運行が可能な超小型バスや高速ダブルデッカー車、最新鋭の燃料電池バスなど多岐にわたる車種を活用している。

『京王電鉄バス株式会社』では高速バスの予約システム『SRS』を独自開発し、インターネットで手軽にバスの座席を直接予約できる高速バス座席予約サイト『ハイウェイバスドットコム』の開発・運営も行う。現在では同社のバス路線に加えて、東北から九州まで全国50社、220以上のバス路線の予約を取り扱う。今回は『ハイウェイバスドットコム』でのサポートチャットボット導入事例を紹介。2018年の導入以降、予約センターへの電話問い合わせを削減した事例から、サポートチャットボットの活用術に迫っていく。

京王電鉄バス株式会社
  • 運輸営業部 高速・貸切事業担当 課長補佐  田中 実 氏
  • 運輸営業部 高速・貸切事業担当 福田 栄記 氏

課題

高速バスの対応エリア拡大に伴い、予約などの電話が激増
繁忙期には、予約センターへ1日1万件もの電話が殺到!

高速バスの座席をインターネットで直接予約できる『ハイウェイバスドットコム』を業界で先駆けて開設し、現在では予約可能なエリアも東北から九州と拡大。利用者から大きな支持を集めている。その一方で、課題だったのは予約センターへの電話の殺到だった。バス路線やバス停の場所についての他にも、予約取り消し、解約・返金の問い合わせなど、電話での問い合わせがほぼ100%だったという。田中氏に当時の状況を伺うと「本来は、高速バス予約のご案内をするのが予約センターの業務なのですが、対応路線が増えるに連れてご予約以外のご質問も多くなり、ご予約の電話がつながらないという状況もありました。年末年始や長期休暇前の繁忙期には、1日の入電数が1万件にのぼることもありました」と振り返る。

そんな中で、チャットボット導入へと至ったきっかけは、2018年にWEBサイトと携帯サイトを統一するリニューアルのときだった。「当時、スマートフォンによるWEBサイトへのアクセスが増えたこともあり、“スマホだったらチャットが便利では?”という着想から、チャットボット導入の検討を始めました。その当時、弊社の他部門でユーザーローカル社へご相談をしていた経緯から、サポートチャットボットの導入に踏み切りました」(田中氏)。

同社でのチャットボット導入は初めてだったというが、福田氏に伺うと「導入の担当者から、管理画面の使い勝手が簡単で、導入までのステップも難なく進められたと聞いています。元々、WEBページに用意していたQ&Aをベースに、階層式のシナリオフローも作りやすかったですし、加えて一問一答型も活用できるのが大きな魅力だと感じました」という。

解決策・運営方法

使い勝手のよい管理画面で、シナリオ型も一問一答型も一括管理
両方に対応できることで回答の幅が広がり、ユーザーの満足度にも直結!

2018年12月にサポートチャットボットを導入。初めてチャットボットの管理画面に触れる担当者が「難しい知識が必要のない、ユーザーにやさしい作りで機能も扱いやすかったです」と、導入後の運用もスムーズにスタートできたという。気になっていたのは、“お客さまにどう使われているか?”という点だった。福田氏は「会話履歴の見やすさがすごくいいですね。途中離脱やチャットボットで回答できない質問が発生した会話履歴を確認すれば、そこに至るまでの会話プロセスが細かくわかるので、“実際に何を聞きたかったのか?”が把握しやすいんです。お客さまが離脱した箇所や、お客さま目線で分かりづらい箇所に気づけるので、シナリオの改善点が見つけやすいですね」という。

導入当初のチューニングには注力をしたという。「やはり、お客さまの問い合わせの手間と時間を省くためにチャットボットでしっかりと返答できること、そのためには使用感の充実を一番に考えました」(福田氏)。より多くの質問内容をシナリオで対応できるように類義語登録を充実させつつ、シナリオで解決できない言葉は一問一答でシンプルに回答を用意した。福田氏によると「例えばバス停の場所やバス路線についての質問も多く寄せられていました。確かに、電車の駅と違ってバス停の場所は分かりづらいんですよね。そこで、バス停の場所やバス路線を一問一答で回答するようにしました」という。また、高速バス予約では混同してしまう言葉もある。「例えば、“取り消し”と“解約”という言葉ですね。日常会話では同じ意味として用いられることもあるかと思うのですが、『ハイウェイバスドットコム』では、“取り消し→決済前の予約取り消し”で、“解約→決済後の予約取り消し”という意味なんですね。“解約”の場合は手数料が掛かるので、回答内容に大きな違いが出てきます。サポートチャットボットでは、“取り消し”と入力すると、AIで関連する候補が提示されるのでとても使いやすいです」と語るのは田中氏。

こうした会話履歴のチェック、回答できなかった内容への対応などのチューニングに注力したことで、導入から1ヶ月後には未解決率が15%→10%ほどにまで解消できたという。さらに利用者も着実に増加し続けている。「特にスマートフォンでは、チャットボットが目立つように設置していますので、使っていただきやすかったのでは、と考えています。社内でも“チャットボットで疑問を解消してくださっているようですね!”という話をよくしていました」と福田氏。

成果

月に8,000件ほどの問い合わせに対してサポートチャットボットが対応し99.3%の回答率! 24時間対応になったことで、夜行バス利用者の問い合わせにも対応が可能に!

現在のサポートチャットボットの利用状況は、月にユニークユーザー数が約8,800人、回答率は99.3%を誇っており(2022年12月実績)、月に8,000件ほどの問い合わせに対して対応できている。田中氏は「電話での問い合わせ数は10%ほど削減していると感じています。その内容も有人対応が必要な質問に限られています。特に私たちが大きな成果だと感じているのは、チャットボットに関する疑問や質問が皆無という点です。お客さまがチャットで質問をする際に使い勝手よく回答を得て頂いている中で、入電数が減っているのはとても大きなポイントです」と語る。福田氏も「予約センターのみなさんも、かつてはすべての問い合わせに対してお答えするという状況でしたが、今では本来の業務である予約のご案内に集中できています」と入電減少の効果を感じているという。

また、夜行バスも運行している同社では、夜間のアクセスに対しての対応も可能になったことは大きな成果だという。これまでは、夜間に問い合わせが発生しても、営業時間外では即対応ができず、翌日の電話対応では間に合わないというケースも発生していたそうだが、サポートチャットボットの導入によって「一定の回答対応ができるようになりました」(田中氏)という。

導入から4年が経った現在、今後さらに活用を期待しているポイントについても伺った。福田氏は「すでに満足度高く活用をさせていただいておりますが(笑)、なによりも、お困りのお客さまにより的確なご回答を用意したいというのが一番の願いです。現在10%ほどの未解決率をよりゼロに近づけられるようにチャットボットの充実を図っていきたいです。例えば、クレジット支払いについてのお問い合わせでは、個別的なご回答が必要なこともありますが、お支払いのタイミングやご返金についての詳細など、より広い回答をご用意していければ、と感じています。どんなに些細なことでもチャットボットに“申し訳ございません”と言わせないようにしていきたいですね」。

田中氏は「会話履歴をさらに分析して、WEBサイトの改善にも活用していければと考えています。チャットボットのチューニング、機能改善はもちろんですが、チャットボットへの問合わせが多い質問内容に関しては、WEBサイトでのご説明が足りない部分では?という気づきを得られているので、今後はデータマイニングなどのツールも活用して、WEBサイトもより満足度高く使っていただけるようにと考えています」と語った。

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