誰もが手軽にメンテナンスできるチャットボットを求めてリプレイス
タイムリーなQ&Aの反映が可能になり、利用件数も1年で2倍以上に向上!回答率も90%以上のハイアベレージをキープし電話問い合わせ数も1,000件の削減
1974年の設立以来、耐震性、断熱性、デザイン性にも優れたツーバイフォー工法のリーディングカンパニーとして安全・安心で快適、そして持続可能な“住まい”を作り続けている大手ハウスメーカー『三井ホーム株式会社』(以下、『三井ホーム』)。ブランドステートメントである「憧れを、かたちに。」が示すように、オーダーメイドの注文住宅やリフォーム事業をはじめ多彩な施設系建築事業など、居住者や利用者の目線に立った住まいづくり、空間づくりが大きな魅力だ。
住まいに対するニーズや価値観も変化し続けている中で、ニューノーマルや脱炭素化への対応も取りつつ、優れた断熱性能を誇るマンション『MOCXION(モクシオン)』など、同社が培ってきた人と環境にやさしくて時を経るほどに美しさを増す建築スタイルを提案し続けている。魅力的な住まいを提供する一方で、『三井ホーム』で課題となっていたのが、社内システムや経費申請、勤怠に関する内容など、月平均2,300件にものぼる社内の問い合わせ対応の効率化だった。ここではDX推進部のお二人に登場いただき、サポートチャットボットの導入のプロセス、そして活用方法についてお話を伺った。
課題
月平均2,300件にものぼる社内問い合わせ対応の課題を解決すべくチャットボットのリプレイスを決意!ITに詳しくなくても手軽に適切に運用・管理ができるチャットボットを求めていた
DX推進部では、社内の情報システムの運用、維持管理をはじめ社内DX化推進を担っている。そのなかで、社内システムや経費、勤怠に関する月平均2,300件もの社内問い合わせの対応は、数々の重要課題の中でも「いち早くどうにかしないといけない課題でした」と田中氏は話す。実は、三井ホームでは課題を解決するために、すでにチャットボットを利用していたものの、うまく機能しておらず、利用者も伸びなかったという。「以前のチャットボットはもちろん高性能ではあったのですが、弊社スタッフではない外部のシステムサポートセンターでしかチャットボットの運営・メンテナンスができず、現場の意見を反映してすぐに対応したり、緊急性の高いQ&Aを随時盛り込んだりすることができないという点が改善点でした。IT知識に詳しくない私でも手軽に扱えて、利用者にとっても使いやすい新たなチャットボットを求めていました」と奥芝氏は語る。
チャットボットのリプレイスを検討し、各社比較をする中で、運用コストを抑えつつも自社で手軽に運用・管理ができ、三井不動産グループ内でも導入実績があるユーザーローカル社のサポートチャットボットが採用された。移行にあたっては、既存のQ&Aの精査からはじめたという。「Q&Aの重複が多くあったり、古いリンクがそのまま使われていたりしていたので、そうした回答の見直しを行いました。やはり、現場社員の視点でQ&Aが構築されていない部分が多くあったのも確か。利用者に対して親切で適切な回答を用意するなどのブラッシュアップを行う良い機会になりました」(田中氏)。
リプレイスを機に、チャットボットの設計についても大きな変更を行った。以前は、システム部門(システムに関する問い合わせ)と、本社部門(人事や経理などに関する問い合わせ)の内容を同じチャットボットで対応していたが、サポートチャットボットの導入を機に、部門ごとに別々のチャットボットに分けて活用することにした。「以前のチャットボットに入れていたQ&Aは、かなりのボリュームでしたので、取捨選択する作業は大変でしたが、思い切って削っていくことで、運用する側にとっても利用者にとっても、質問から回答までがスマートに整理されたと思います。旧チャットボットからの移行の際には、ユーザーローカル社のサポートやアドバイスがとても手厚くて、丁寧なレクチャーもしていただけたので、導入作業はスムーズに行うことができました」(奥芝氏)とも。こうして2021年12月よりサポートチャットボットの運用をスタートした。
解決策・運営方法
自社内での運用・管理が可能になり、タイムリーなシナリオのメンテナンスが可能に!快適な使用感で運用が属人化しないこともメリット
リプレイス前は、自社で自由にチャットボットのメンテナンスができず、社員のニーズを即座に対応できない点が課題だったというが、サポートチャットボットの使用感について伺うと「ITの知識がなくても直感的に扱いやすい管理画面は魅力です。社内でメンテナンスが行えるようになったので、緊急性の高い回答や、タイムリーなQ&Aをすぐに設置できるようになりました」と奥芝氏。
運用する上で快適なのは、管理画面内の検索機能だという。新しいQ&Aの追加を検討する際に、古いQ&Aや似通った回答の検索ができるので、メンテナンスのスピードに加えて精度も向上した。「管理画面が本当に簡単に扱えるので、チャットボットの運用が属人化しない、というのも大きなメリットだと感じています」(奥芝氏)
システム部門と人事や経理といった本社部門のQ&Aを切り離した効果も感じているという。システム部門のチャットボットでは、電話問い合わせを担当するサポートセンターが主導して、社員から多く集まる質問を厳選してチャットボットに追加する流れができてきている。一方で、本社部門ではシナリオを担当部署ごとにカテゴリ分けをして、部署を起点に質問から回答までたどり着くように設計している。
本社部門のチャットボットを独立させたことで、新たな課題も見えてきたという。「チャットボットの利用部署を増やし、回答できる範囲を広げることで、本社への問い合わせを削減することも導入前の大きな目標でした。現在は、一定の効果を感じているものの“チャットボットを活用すれば各部署への問い合わせが減りますよ”という社内認知をさらに進めていきたいと思っています」と話す田中氏。
そこで、チャットボットの利用範囲拡大のための施策のひとつとして、フォーム機能を活用している。ユーザーがチャットボットで解決できなかった場合に、“何を知りたかったのか?”の声を集め、フォームで各部署へと転送されるようにすることで、部署ごとにシナリオの精査・追加修正を行えるように工夫している。「フォームの回答のなかで未対応のものを見つけたら、私から連絡して対応方法を一緒に探るなどの対応もしています。まだ道半ばではありますが、各部署でメンテナンスができるようになれば、さらに問い合わせ削減に寄与できると感じています」(奥芝氏)
他にも、チャットボットのキャラクターを“あおいさん”とネーミングし、利用者に愛着を持って使ってもらえるような工夫も行っている。奥芝氏によると「“あおいさん”に聞いてみたけど分からなくて問い合わせしました」という声も多くあり、改善点はあるものの、利用者が増えている手応えもあるそうだ。
成果
導入後1年で利用件数は2倍以上に!回答率も90%以上のハイアベレージをキープし電話問い合わせ数も1年で1,000件の削減!
導入から1年半ほど経過した現在(取材時)、リプレイスの成果について伺うと「利用件数は前年比で2倍以上と大幅に増えています。"あおいさん”に質問しやすくなったのだと思いますね。加えて、一度"あおいさん”で疑問が解決できた人はリピートする傾向がありますので、サポートチャットボットによる成功体験を得た人も多いと思います」と話すのは田中氏。回答率も、システム部門で96.2%、本社部門で91.7%とハイアベレージをキープしており、未解決率は9.67%と社員からの問い合わせのほとんどに対応できていることも確認できる。こうした利用者の増加と高い回答率のおかげで、電話での問い合わせ数は前年比で1,000件ほど削減した。田中氏によると、「"あおいさん”が的確な選択肢を提示してくれるので回答までたどり着きやすくなったと感じています。ただ、電話問い合わせ数全体の減少でみるとまだまだですので、社内認知を深めながら、さらなる問い合わせ数削減にチャレンジできるのでは、と考えています」という。
ただ、月単位のユニークユーザー数は最も多い月で1,100人以上、回答数は3,600件以上にものぼり「のべ人数ではありますが、対象社員の約半数が一度はあおいさんに触れたことになります。運用側からは“このQ&Aを追加してください”などの積極的な進言が増えましたし、問い合わせ対応担当からは“業務についての簡単な問い合わせが減っています!”と喜びの声をいただいています」と多くの声も届くようになってきたという。
運用サイドにとっても利用者にとっても使い勝手が向上したチャットボットについて、今後の展望を伺った。奥芝氏は「システム部門では一定の成果が出たと捉えていますが、本社部門ではまだまだ改善の余地があると感じています。各部署では問い合わせ対応にまだまだ時間を取られていると思いますので、問い合わせ担当の方々に、“あおいさんを活用すれば、問い合わせ業務がすごく楽になるよ!”と認知をさらに深めて積極的に使っていただけるような空気づくりを広げていきたいですね」。
田中氏は「各部署で担当者を決めて、いきなり勉強会からスタートしても、なかなか"あおいさん”の使い勝手の良さが伝わらないんですよね。部門ごとに話をしつつ、実際に使ってもらいながらチャットボットの使いやすさを実感してもらうことが大事かな、と感じています。社内での利用者と信頼度が向上したら、やがてはお客様対応のチャットボット導入も考えています。チャットボットを介したやり取りによって、お客様のご希望やよりお客様目線のトレンドなどのデータも増えると思いますし、サービスの向上につなげることができるのでは、と考えています」。
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