サポートチャットボットの戦略的活用で問い合わせ率30%低下を実現。生成AIを活用したMTGのカスタマーサポート改革

Share

主力ブランドは、美容ローラーから始まり、現在ではヘアケア、シャワー、フレグランス、リネン、ウェアなどを展開する「ReFa(リファ)」と、EMSを中心としたトータルウェルネスブランド「SIXPAD(シックスパッド)」。そのほか「VITALTECH(バイタルテック)」繊維を使ったリカバリーウェアの「RED(レッド)」など常に常識を破るような新しい発想で商品を生みだし続ける。私たちMTGは、事業ビジョンに掲げる"VITAL LIFE"世界中の人々の健康で美しく生き生きとした人生の実現を目指し、BEAUTY(美容)、WELLNESS(健康)の領域で、ブランド、商品、サービスを開発しています。

魅力的な製品が続々と生まれ、ユーザーが増えれば増えるほど、企業が直面するのが「カスタマーサポートの負荷」という壁だ。特に、MTGのように多角的なブランド展開を行う企業にとって、製品ごとの知識を把握し、顧客一人ひとりに迅速かつ正確な回答を提供し続けることは至難の業といえる。実際に、問い合わせ数の増加や問い合わせ内容の高度化を感じていたMTGは、お客様対応の一次窓口として「サポートチャットボット」を、コールセンター担当者の生産性向上を目的として法人向け生成AIプラットフォーム「ChatAI」を導入した。

ここでは、同社がサポートチャットボットとChatAIを併用している背景や相乗効果などについて伺っていく。

株式会社MTG ダイレクトマーケティング事業本部 DM事業戦略部 CX課 林 正美氏
株式会社MTG
ダイレクトマーケティング事業本部 DM事業戦略部 CX課
林 正美氏

課題

商品の拡大に伴い、問い合わせ数の増加と内容の高度化に課題を感じていた。業務効率化と質の向上を実現するために、サポートチャットボットとChatAIを導入

MTGのカスタマーサポートは外部のコールセンターへ委託し、約30名のコールセンター担当者が対応にあたっていた。通常時で月間5,000件から6,000件、繁忙期には10,000件ほどの問い合わせが舞い込む状況だったという。そこで、お客様の自己解決率を高めるために、有人チャットの導入やチャットボットのシナリオの見直しを実施した。

その見直しの中で浮かび上がった課題が、問い合わせ内容の分析に要する時間だ。「当時は問い合わせのログを自分たちで一つずつ拾い、傾向を探っていました。そのため、分析に時間を取られてしまい、本来取り組むべき改善施策にまで手が回っていませんでした」と林氏は振り返る。

この課題を解決するため、同社は直感的な操作と高度な分析機能を備えたサポートチャットボットを導入した。林氏は「サポートチャットボットはシナリオのメンテナンスが簡単で、内容によっては数分で完成します。問い合わせ内容の分析機能も充実しており、問い合わせ数の削減や分析の効率化を実現できると感じ、導入を決めました」と語る。

ご利⽤ガイドに誘導してチャットボットで⾃⼰解決を促したうえで、
解決できない場合は有⼈チャットで対応

サポートチャットボットの導入後、問い合わせに関する課題の解決が進む一方で、新たな課題が発生した。それは、商品数の増加に伴い、コールセンターへ届くお客様からの問い合わせ内容が高度化したことだ。具体的には、ReFaのドライヤーにおけるスペック比較や、海外で使用できるモデルの問い合わせなどが挙げられる。このような高度な知識が求められる内容を、全てのコールセンター担当者が即答するのは困難だ。実際に、その場で答えられない内容についてはMTGの担当部署へ確認するフローが発生し、回答までに数日かかることもあったという。そこで、チャットボットで解決できない複雑な問い合わせに対し、コールセンター担当者が自身で素早く質の高い対応をできるよう、法人向け生成AIプラットフォーム「ChatAI」を導入した。

解決策・運営方法

ウェブサイトのURLを入力するだけでQ&Aを自動生成。マニュアルを生成AIに読み込ませて質の高い回答が即時にできる環境を構築

サポートチャットボットを効果的に活用するため、MTGでは週に1度の振り返りを実施している。「分析で重視しているのは未解決率です。管理画面で回答できなかったデータを確認できるので、次に同じ問い合わせが来た際には答えられるように調整しています。この際、シナリオに情報を追加するのか、一問一答を新たに作成するのかなど、柔軟に対応できるので助かっています」と林氏は語る。

他にサポートチャットボットでよく活用しているのが、ウェブサイトのURLを入力するだけでAIがQ&Aを自動で生成する機能だという。これまでは、想定される質問と回答を人間が一つひとつ作成し、システムに登録する必要があった。しかし今では、ご利用ガイドや製品紹介のURLを読み込ませるだけで、AIが最適なQ&Aを瞬時に生成する。「使える生成AIのモデルが更新されるにつれて、生成されるQ&Aの精度が高まっていると感じます。ユーザーローカルの製品はモデルのアップデートが早いため、今では自動生成されたほとんどのQ&Aをそのまま使えています」と林氏は話してくれた。

一方、ChatAIではドライヤー、ヘアアイロン、美顔器といった製品カテゴリーに最適化された回答ができる環境を構築している。コールセンター担当者は、問い合わせに対して各カテゴリごとの環境で検索をかけるだけで、生成AIを使って回答を抽出、まとめを行い、素早く質の高い回答ができるようにしているという。

これにより、コールセンター担当者はマニュアルを最初から読み込んだり、MTG側に確認したりするのではなく、ChatAIに聞くことで商品知識の偏りをなくし、誰でも質の高い回答が即時にできる環境ができつつある。

成果

受注件数に対する問い合わせ率が30%減少し、会話履歴の分析が1日→1時間にまで短縮。メール返信のスピードも大幅に向上するなど生成AI活用も加速

サポートチャットボットと有人チャットの導入によって、商品数や注文数が増え続ける中でも受注件数に対する問い合わせ率は11%から8%へと約30%低下した。注文数が増加し、本来ならコールセンターの席数を増やすべき局面でも、サポートチャットボットによる効率化で現行体制のまま対応品質を維持できている。また、コールセンターとの情報共有のために1日を要していた会話履歴の分析は1時間にまで短縮された。

さらに、MTGではサポートチャットボットにも搭載されているユーザー向けの生成AI機能「カスタムチャット」の検証も進めている。製品マニュアルだけでなく、商品情報が掲載されているウェブサイトのURLを管理画面に登録しておくことで、サイトの更新に応じて自動でチャットボットが情報を反映して回答してくれるのだ。

サポートチャットボット内で、⽣成AIが製品情報をもとに⾃動回答するイメージ

また、ChatAIの導入で、MTGの業務効率は大幅に上昇した。たとえば、全国的に物流が遅延し、月間で8,000件ほどメールの問い合わせがきた際、MTGでは返信文を自動作成する仕組みをChatAIで構築。「以前は月間6,000件の問い合わせに対して返信まで24時間以上かかっていました。そこでChatAIを使用したところ、月間8,000件の対応を12時間以内に完了し、従来の2倍以上のスピードで対応することができました」と、ChatAIを活用した成果が明らかになっている。

今後、林氏が見据えるのは、顧客対応の完全な自動化と社内業務全般におけるAI活用の深化だという。「まずは、サポートチャットボットでAIによるお客様対応を本格化させたいですね。ChatAIについては一定の成果を出していますが、さらに活用する幅を広げていきたいと考えています。お客様対応以外の日常業務でも効果を発揮しているので、さらなる効率化が図れるような使い方を全社に定着させていきたいですね」と林氏は語る。