個別回答数、対前年比大幅削減!チャットボットがもたらしたご意見・ご要望、お問い合わせ対応の改善
小田急電鉄の取り組みに学ぶ、お客さまサービス品質の向上と業務効率化の両立の秘訣とは

東京都・神奈川県を中心に交通、不動産、デジタル、生活サービスなど様々な事業を展開する『小田急グループ』。鉄道事業を担う『小田急電鉄株式会社』は、新宿を起点に箱根の玄関口である小田原までを結ぶ小田原線、湘南エリアへ至る江ノ島線、多摩ニュータウンを結ぶ多摩線の3路線、計120.5キロの路線において、1日187万人(2023年度)の乗客が利用する。通勤・通学に加えて、箱根・江の島への観光路線としても多くの支持を集めるロマンスカーも運行。「職、住、商、学・遊、ウェルネス」を満喫できる拠点が広がる人気沿線として知られる。

2021年には、新たな経営ビジョン「UPDATE 小田急 ~地域価値創造型企業にむけて~」を策定。サステナビリティ経営を土台に据え、沿線のポテンシャルと開業より約100年にわたって蓄積してきた『小田急』の強みを活かした事業展開に挑み続けている。中でも、経営ビジョンの中の取り組みの一つである『DX推進』を具現化するため、さらなるお客さまサービス品質の向上と業務効率化を目的として、課題に浮上したのがご意見・ご要望、お問い合わせ対応業務の自動化だった。特にお客さまからのご意見・ご要望に対し、チャットボットによる24時間自動受付対応を実現したことにより、お客さまサービス品質の向上にもつなげた、鉄道業界でも先駆けとなるチャットボットの活用方法について、広報部 邨松賢治氏にお話を伺っていく。

小田急電鉄株式会社
広報部 課長 邨松 賢治 氏

課題

お客さまにとって必要な情報を必要な時に届けるために――
お客さまサービス品質の向上と業務効率化、その両立を実現するべく低コストで自社運用可能なサポートチャットボットを導入

2021年度、経営ビジョン『UPDATE小田急~地域価値創造型企業~』が策定され、DX推進に注力してきた『小田急電鉄株式会社』。これまでは、ご意見・ご要望を含むお問い合わせ対応業務をすべてマンパワーにより担ってきたが、9時~17時の受付窓口時間内でしか対応ができず、必要な時に必要な情報を提供できていないという課題があった。邨松氏は「CS業務の本分として、心と心が通じ合わなければ、お客さまが抱いているニーズや思いを受け止められないと感じています。その上で、スマートフォンやチャットといったコミュニケーションツールが浸透した時代のニーズの変化を考えたときに“お客さまにとっては、時には、ツールのほうが思いを率直に伝えやすいのでは?”との思いから、DX推進を起点にサービス品質の向上と業務効率化の両立ができないか、と考えました」と振り返る。

これまでは、日々の問い合わせについては「小田急お客さまセンター」が電話対応し、ご意見・ご要望は入力フォームを介し受付、CS担当者がすべてにご回答を差し上げていたという。しかしながら、ご意見・ご要望に対して、関係部署との綿密な連携により詳細な回答をつねに提供し続けることに“マンパワーの限界”を感じていたという。こうした課題をクリアできそうなツールとして目をつけたのがチャットボットだった。

決め手となったのは、初期費用とランニングコストの低さに加えて、誰が取り扱っても分かりやすい管理画面だという。「メンテナンス業務がすべて自社対応できる小回りの良さや、システムのアップデートも早く、サポート体制も丁寧で迅速という点が、ニーズにとてもマッチしたツールでした。大規模なシナリオ(Q&A)の修正が発生した際でも、便利なシナリオチェック機能*が有効であり、シナリオ作成時のカテゴリー分けについても、ユーザーローカルより的確なアドバイスときめ細やかなサポートによって、より使いやすいシナリオ構築ができました」と邨松氏は語る。こうして、2023年4月よりサポートチャットボット運用がスタートした。

*シナリオチェック機能:作成したシナリオデータのなかで修正すべき箇所を自動でフィードバックしてくれる機能

解決策・運営方法

パソコンでもスマートフォンでも利用しやすい動線設計で、チャットボットの活用を促進!駅施設や係員の対応、車内環境に関するご意見・ご要望にもフォーム機能で対応

サポートチャットボットの導入後は、ホームページ上に掲載していたお問い合わせ電話番号を削除し、お問い合わせやご意見・ご要望はすべてチャットボットへと誘導する動線に変更した。

現在の小田急電鉄ホームページトップ画像。右下のポップアップにチャットボットへのリンクが設置されており「お問い合わせ・ご意見・ご要望」を一括で対応できる。

意外と読まれているのがチャットボットのトップに掲載している「チャットボットとは」という使い方の案内だという。活用方法を分かりやすく説明することで利用を促している。また導入当初各駅改札口近くにチャットボットの案内を載せ、お客さまの目に留まるように工夫したことや、小田急の会員向けアンケートサイトからチャットボットの認知を得るため実際に体感していただき、ご利用のしやすさや内容などの周知を図る施策を展開している。「導入直後は初動を“ひと”から“システム”に転換し、お問い合わせ電話番号をホームページ上から削除、チャットボットに統一したことによる不慣れさやお客さま対応の本分から逸脱しているなどのご意見をいただく覚悟をしていましたが、“システムへの転換への批判”や“電話番号がわからず不便になった”というご意見はほとんど頂戴することなく受け入れられたことは驚きでした」という。

車両・運行や係員の対応、乗車券類、施設、工事などについてのご意見・ご要望は、チャットボットのフォーム機能で対応している。合わせて、人身事故など列車運行異常時においては影響度合いを鑑み、現場の状況を加えながら、ご不便をおかけしていることへのお詫びをフォームへ掲載することで、一定のご理解やご納得をいただき、ご意見の減少につながった。「従来ですと、ホームページ上にご説明・ご案内・お詫びを掲載するためには多数の手順と許可、それに伴う時間が必要でしたが、システム上で直接対応でき、タイムラグなく配信対応が可能となりました」(邨松氏)

マンパワーでのご意見・ご要望、お問い合わせへの対応から、サポートチャットボットへの移行が想定以上にスムーズに行われた結果、2023年7月にはAI FAQシステムの導入に至った。以前は、ホームページ上に問い合わせ用FAQ専用のページを採用しており、お客さまご自身で情報を取りにいっていただく対応となっていた。そのため、必要な情報がどこに掲載されているのかが分からずご意見につながるケースが散見された。サポートチャットボットと連携したAI FAQシステムを導入したことにより、お客さまが求めている必要な情報までスムーズにご案内できるようになった。また、常に新しい情報を提供するために、管理・運用上で修正や新規追加などを一括で更新できるようになり、大変便利になったという。AIFAQページのトップ画面では、上部にはチャットボットを配置し、下部にFAQをカテゴリーごとに一覧でわかりやすく表示できるので、お客さまが調べたい方法で情報を確認することができ、利便性がさらに向上した。

成果

チャットボットによる24時間対応でご意見・ご要望への個別回答数は対前年比大幅削減を達成!鉄道業界の先駆けとなる取り組みに社内外から反響が

これまで膨大な時間と工数を要していたご意見・ご要望の対応をチャットボットで自動化を図った結果、個別回答数が前年比で大幅に減少し、業務効率の劇的な向上に成功した。一方で、いただいたご意見は担当部署に伝え改善すべきものは改善を図り、係員などへのご意見は担当部署を通じ、現業職場の責任者に伝え指導するなど、導入以前と同様の対応を継続している。

「もちろん、ご意見・ご要望は、お客さまの声を直接聞くことのできる貴重な宝物であり財産です。そのうえで、チャットボットからの回答の精度が高まることで、チャットボットの利用率も高まり、お客さまより認知・評価されるものと感じています」(邨松氏)平均返答率は、導入後から現在まで常に90%を超える高水準を達成している。

また、注目すべきは、チャットボットの利用者数の半数以上が受付窓口時間外のご利用ということだ。今までは、受付窓口時間内のみの対応しかなかったが、乗車券類や定期券など営業のご案内、列車ダイヤや駅の施設などのご案内、線路近接での工事のご案内が24時間体制で対応が可能となった。合わせて、人身事故など列車運行異常時においては影響度合いを鑑み、リアルタイムで現場の状況を加えながら、ご不便をおかけしていることへのお詫びをフォームへ掲載することで、一定のご理解やご納得をいただき、ご意見の減少につながっている。中でも、2024年2月の降雪予報が出た際、受付窓口時間外であったが、チャットボットで現状の列車運行情報と翌朝初電よりの運転情報を定期的に配信したことで、翌朝までにご意見の受付やお問い合わせは“ゼロ”だったという。

「列車運行異常時による遅延や運休といったトラブルについて、情報配信のスピード向上、回答の自動化が図られるようになったことで、適時適切な情報提供と合わせ、業務負担の軽減も実現しています。余談となりますが、ご意見・ご要望の個別回答数の大幅な削減やお問い合わせの自動化による業務効率化が図られたことにより、新たに業務内での時間が創出できました。導入以前と比べ、担当部署といただいたご意見の改善に向けた綿密な打ち合わせが可能となったうえ、SNS上の弊社に関わる声の監視やチーム内でスキルアップの教育が行われるようになりました。チャットボットの活用によってお客さまの心情を汲み取り、疑問を解消することのできる情報提供、ご案内ができることも大きな成果となっています。これから先を見据えサポートチャットボットのさらなる可能性を感じています」と邨松氏も確かな手ごたえを語る。

お客さまからのご意見やご要望への対応にチャットボットを活用するという施策は、鉄道業界においては先駆けとなる試みであるため、「社内外より高い評価をいただいており、グループ会社や同業各社様から数多くのお問い合わせや意見交換の要請をいただいております」と邨松氏も反響を語る。今後については、お客さまのニーズを先取りし、これまで以上に精度を高め、より使いやすいチャットボットの運用をめざしていくことを目標にしているという。

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