AI分析レポートで工数をかけずに改善点を見つけ、問題解決率80%、平均返答率95%を達成。「コールスパイク」による取りこぼしを解決した三和シヤッター工業のチャットボット活用

三和グループ創設70周年を迎えた『三和シヤッター工業株式会社』(以下、三和シヤッター工業)は、「安全、安心、快適を提供することにより社会に貢献する」を使命とし、シャッターやドアなど建設用製品を扱う総合建材メーカーとして業界を牽引している。同社の製品は日常のあらゆる場所で、人々の暮らしと安全を守り続けているのだ。

三和シヤッター工業において、顧客との重要な接点となっているのがカスタマーセンターだ。「一般修理受付」と「お客様相談」の2つの窓口を構え、修理受付は24時間365日体制で顧客の安心を支えている。しかし、月間数万件にも及ぶ問い合わせの多くを電話で対応する中で、特定の時間帯に電話が集中する「コールスパイク」による入電の取りこぼしや、専門的な問い合わせにかかる対応の長時間化といった課題に直面していた。

さらなる顧客満足度の向上と、全社的なDX推進を目指し、同社はサポートチャットボットを導入した。丁寧なシナリオ設計と定期的な改善によって、現在では返答率95%、問題解決率80%という数字を達成している。ここでは、サポートチャットボット導入の背景から運営方法、今後の展望について伺っていく。

三和シヤッター工業株式会社 品質保証部 カスタマーセンター 一般修理受付課 稲生 竜氏(左) 渡邉 聡氏(右)
三和シヤッター工業株式会社
品質保証部 カスタマーセンター 一般修理受付課
稲生 竜氏(左) 渡邉 聡氏(右)

課題

平日の日中帯だけで数百件の入電があり、早朝や夕方、週明けの「コールスパイク」による取りこぼしがあった
チャットボットを導入すれば、電話では問い合わせをしていなかった若年層からのVOCも期待できる

三和シヤッター工業のカスタマーセンターは、日々顧客の困りごとに寄り添っている。しかし、平日の8時から18時半の時間帯だけでも1日に数百件もの電話が寄せられており、「全体の稼働率を見ると、安定して問い合わせには対応できていました。しかし、お客様がお店のシャッターを開ける早朝や閉店時の夕方、そして週明けの月曜日に問い合わせが集中する傾向があり、電話の取りこぼしが発生してしまうことに課題を感じていました」と稲生氏は当時の状況を語る。

さらに、同社のカスタマーセンターはお客様相談窓口として、建設会社や設計事務所などからの専門的な問い合わせも受け付けている。「当社では数多くの製品を扱っており、シャッター以外にも自動ドアや間仕切りなど、種類が幅広いです。これらの製品をオペレーターが全て記憶するのは難しいため、カタログに載っていない情報については社内の開発部門に問い合わせる必要があります。そのため、1件の電話対応に1時間近くかかることも珍しくありません」と渡邉氏は教えてくれた。

こうした現場の突発的な負担に加え、会社全体としてもITリテラシーの向上とAI活用を目指す「DX推進」の波が起きていた。その一環として、同社では電話の問い合わせに対し、IVRで対象となるFAQのリンクをSMSで送って自己解決してもらうことを検討したが、一般修理受付窓口には緊急の問い合わせも多く、即時対応が難しいということで断念した。

そこで、三和シヤッター工業はもともと興味を持っていたチャットボットの導入を進めることにしたのだ。渡邉氏は「チャットボットを導入している会社からは、これまで電話を利用していなかった若年層の利用が増えたという話を聞きました。弊社では現在の利用者層に加えて、今後はデジタル化した製品の拡充に向けて、より幅広い世代の声を集めたいと考えていました」と、問い合わせの少なかった層からのVOCを集めることも期待していた。

最終的に同社は、トライアル期間を経て「管理画面の使いやすさ」や「コスト」、「問い合わせに対するレスポンスの良さ」「AIを使ったレポート機能の充実」といった複数の観点からサポートチャットボットの導入を決めた。「他部署から使い方を聞かれた際、その場で軽く説明しただけで操作を理解できるくらい、サポートチャットボットは使いやすいですね。それだけでなく、いろいろなデータの分析や出力ができるので、他部署から問い合わせを受けた際にすぐ対応できるところも嬉しい点です」と稲生氏は語ってくれた。

解決策・運営方法

「AIレポート分析機能」で工数をかけずに必要な情報と改善点を得ることができる
生成AIがRAGをもとに回答する「カスタムチャット機能」には、自己解決率の向上に期待

サポートチャットボットの導入後、三和シヤッター工業は既存のFAQの中から「トラブル関連」と「商品仕様関連」の2つの軸でシナリオを分岐させ、ユーザーが迷わない導線を設計した。その際の工夫として稲生氏は「シャッターに関連するFAQには、専門用語が多く使われる傾向にあります。そこで、シナリオを構築する段階で、これらの専門用語を一般の方にも伝わる言葉に置き換えました。そうすることで、誰が見ても迷わず自己解決できる回答になります」と教えてくれた。

三和シヤッター工業が特に活用している機能に「AI分析レポート」がある。「サポートチャットボットはワンクリックで必要なデータが可視化されます。通常Excelでレポートを作成する場合、調べたい数字や期間を絞るために関数を組まなくてはいけませんが、サポートチャットボットはその必要がなく、クリック一つで知りたい情報を得られます。AIが自動で分析コメントを入れてくれるおかげで、工数をかけずに必要な情報や改善点を得ることができています」と渡邉氏は語る。

三和シヤッター工業では、サポートチャットボットの導入直後は1ヶ月に1回、運用が落ち着いた今では3ヶ月に1回の頻度で社内向けの報告書を作成している。経営層にも提出する報告書となるが、レポート機能が充実しているためレポート作成工数の削減に繋がっている。

また、AI分析レポートで出力されるコメントは、月に2、3営業日ほどかけて行うチャットボットのメンテナンスにも活用しているという。稲生氏は「AIに分析してもらうと解決率の低い質問をピンポイントで教えてくれます。その内容をもとにまずはFAQを改善し、その後にチャットボットのシナリオや一問一答に反映させています。今は月に更新・改修するFAQの目標件数を決めて運用しています」と語る。

サポートチャットボットでは、定期的に機能のアップデートが行われている。例えば、チャットボットの入力欄の上部に頻出のキーワードを表示できる「クイック検索機能」や、商品ページや資料を読み込ませ、その内容をもとに生成AIが回答する「カスタムチャット機能」などが追加されてきた。

三和シヤッター工業では現在、カスタムチャットの活用に向けて検証を進めており、稲生氏は「『使用上の注意』や『保証期間』など、FAQにはまだ反映しきれていないが、取扱説明書には答えが記載されている問い合わせもあります。これらをカスタムチャット機能で回答できればさらに自己解決を促せるので、丁寧に検証を進めていきたいですね」と期待を込めている。

成果

ユーザーには入力するポイントも提示することで問題解決率80%・平均返答率95%を達成
現場経験を積んでいない事務員が製品知識を得るために、サポートチャットボットを活用することも

AI分析レポートを活用して定期的にチャットボットの更新・改修を進めている三和シヤッター工業では、問題解決率80%・平均返答率95%の目標を達成している。この目標を達成できた背景について、稲生氏は「ユーザーの入力画面をただ『入力してください』とするのではなく、『製品名と症状を入れるとご希望の回答を得やすくなります』といった文言を加えることで未解決を減らしています」と教えてくれた。

また、同社ではユニークユーザー数の向上施策にも取り組んだ。施策として、ポップアップ型チャットボットを設置するページ数をさらに増やしたことで、導入当時からユーザー数を200人以上伸ばすことに成功した。

サポートチャットボットが変化をもたらしたのはユーザーの動きだけではない。三和シヤッター工業の営業所に勤務する事務員が、製品知識を調べるための社内辞書として活用し始めているのだ。「研修や現場経験を積んでいる営業とは異なり、事務員はあまり製品に触れる機会がありません。そのため、必要に応じてチャットボットから知識を得ることもある」と稲生氏。この変化は、社内での問い合わせを削減している可能性もあるそうだ。

サポートチャットボットの今後の活用について同社は、製品の高度化に伴い、回答精度も高めていくことを考えている。建材業界においても、スマートフォンと連動して開閉するシャッターなど、製品のIoT化が進んでいる。これまでの「物理的な故障」だけでなく、「アプリの設定方法」や「ネットワーク接続の不具合」といった、よりIT領域に近い複雑な問い合わせが増加していくことは確実だ。「製品が高度化・複雑化するIoT時代において、カスタマーサポートの難易度はさらに上がっていきます。だからこそ、AIを活用したサポートチャットボットの存在は必要不可欠です」と渡邉氏。「同時に、新製品をリリースした際のVOCをチャットボットから拾えることにも期待しています。まずはチャットボットに聞いてみようと思っていただけるような体制を目指し、シナリオの拡充や動線を整備して認知度をさらに高めたいですね」と稲生氏は語ってくれた。