AIチャットボットで住民問い合わせ対応の自動化と窓口の充実化を推進。富田林市インタビュー

緑豊かな自然に囲まれた歴史情緒あふれる街並み

大阪府南東部、奈良県にほど近いところに位置する富田林市。市の北部エリアには平野が広がり、市を貫くように悠々と石川が流れる。南部エリアは金剛山、葛城連峰を臨み、豊かな自然に恵まれている。
市内には飛鳥時代の古代寺院跡もあるなど、歴史ある街だ。16世紀中頃に、仏教寺院などを中心に形成された富田林寺内町は、大阪府内では唯一、国の重要伝統的建造物群保存地区にもなっている。40棟ほどの伝統的な町家が並び、さながらタイムスリップしたかのような歴史情緒あふれる風景が残る。
大阪の中心地である難波から電車で40分程度と好アクセスにも関わらず、過度に観光地化されていない、いわば知る人ぞ知る街だからこそ、あくせくせずにゆっくりと景観を楽しむことができる。近年はそうした街の雰囲気にあこがれて富田林市に移住してくる人も増えているという。

富田林市
富田林寺内町の中心部を南北に結ぶ、日本の道百選にも選ばれている城之門筋
富田林市
富田林寺内町の古い町並みが約1,000基の行灯に照らし出され、幻想的な風景が浮かび上がる富田林の夏の風物詩「寺内町燈路」

そんな富田林市役所のウェブサイトが今年、12年ぶりにリニューアルを実施。 リニューアルに際して人工知能(AI)を活用したユーザーローカルの「サポートチャットボット」をウェブサイト内に設置し、市民への情報発信とコミュニケーションの活性化を推進している。今回、市の情報公開課でウェブサイトの運営を担う梶本広報係長と、ウェブサイトのリニューアルを支援した福泉株式会社の福泉代表取締役に話を聞いた。

必要な人がいつでも手軽に情報にアクセスできる

ウェブサイトのリニューアルにともない、チャットボットを導入した背景とは。

梶本氏梶本広報係長(以下、梶本)「12年ぶりのリニューアルということで、せっかくなら良いものにしたいという思いがありました。チャットボットの設置については、多くの方に見てほしい、活用してほしいという期待のもと、最初はウェブサイトのキャッチコンテンツになればいいなと考えていました。」


富田林市 情報公開課 広報係長 梶本 潤 氏
富田林市 情報公開課 広報係長 梶本 潤 氏

当初、AIチャットボットの導入は情報公開課の内部で上がった案ではなく、サイトのリニューアルを支援した福泉株式会社からの提案がきっかけだったという。どういった課題意識のもとで提案に至ったのか。

福泉氏福泉代表取締役(以下、福泉)「私たちは、1998年頃から多くの自治体のサイト運用を支援しています。自治体の運営というのは業務範囲が非常に広く、いわば役所は“何でも屋さん”。同じ人数規模で運営される民間企業と比べて、役所内は情報の整理がとても大変なんです。」

仮に40年間ほどの勤続期間内で、3年前後での異動を重複なく繰り返したとしても、1人が経験できるのは12、13ほどの部署になる。全体で40ほどもある各部署のそれぞれの業務や情報をくまなく把握することは、役所内のどんなベテラン人材であっても現実的ではないだろう。

福泉氏福泉「そうしたなかで、必要な人が手軽に情報にアクセスできるようにならないかという課題を、AIチャットボットが解決できるのではと考えました。」

福泉株式会社 代表取締役 福泉 秀人 氏
福泉株式会社 代表取締役 福泉 秀人 氏

税務関連や水道関連など、まずは4つの部門に関する質問に絞って運用を開始。ウェブサイトには各担当部門から洗い出された「よくある質問」をまとめたページも存在しているが、そのページにたどりつくことができない利用者もいて、結局のところ電話を中心とした問い合わせはなくならないという。

梶本氏梶本「実際に導入してみて、土日祝日や、9時から5時30分までの業務時間以外の問い合わせも含めて、24時間365日休みなく質問を受け付けられるのは大きなメリットですね。なかなか平日に役所に来られないという利用者の方々も、自分のタイミングでいろんなことを質問できるのが良い点だと思います。」

チャットボットを導入してみて、反響はどうだったのだろうか。

梶本氏梶本「まだ導入して間もないので(※)、効果を測定する段階ではないと思っていますが、データを見るとチャットボットを使ってくれている人がきちんといるので、役には立っているのではないかと思います。」(※リニューアルしたサイトのリリースが2018年3月末、インタビューは4月の中旬に実施。)

福泉株式会社 代表取締役 福泉 秀人 氏

福泉氏福泉「利用者がどういう情報を求めて、どんな検索をしているのか、書面・電話やサイト内検索ではなかなか定量化しにくい情報も、会話のログとして残るという点がチャットボットのメリットのひとつ。そうしたデータを自治体ごとに絞って蓄積できるため、ゆくゆくは利用者目線でサイト内のレイアウトを改善して情報発信の質を上げたり、ウェブサイト上の滞在時間も増えて知らせたい情報に誘導できたりという効果も期待できます。」

人間が扱うには膨大なアクセスデータや問い合わせ履歴も、チャットボットではデータの蓄積が自動でなされることでウェブサイトの品質改善につながるヒントになると考えているそうだ。

自治体での利用に最適なチャットボット

福泉株式会社では、自治体での導入に最適なチャットボット事業者を見つけるために、AI活用に関する専任担当者が複数のチャットボット提供事業者を訪問して話を聞いた。各事業者と何度も打ち合わせを重ね、細かい部分まで丁寧なヒアリングを続けた結果、いくつかの傾向や問題点も見えてきたという。

福泉氏福泉「チャットボットを提供されている企業の中には、まだまだこれからの改善が必要な、具体的なサービスとして完成品とは言えないような印象を受けた企業もありました。コスト面でも、月額数百万といった、とても自治体さんにはおすすめできないものもありました。」

数多くのチャットボット提供事業者があるなかで、限られた予算と資源での運営が必要な自治体への導入に最適なサービスを探すプロセスには、苦労があったようだ。

福泉氏福泉「コスト面、機能の充実ぶりなどを考慮して、ユーザーローカル社のサポートチャットボットを提案することになりました。」

ユーザーローカルのサポートチャットボットは、60億件の会話データの分析に基づく高度な自然言語処理技術や、テキスト解析の精度向上に特化した独自のAIを活用しつつ、業界最安値水準の低価格で提供している。総務省が公開する情報通信白書でもAI活用の可能性が模索され、さらなる活用が現実味を帯びてきている通り、福泉株式会社では多くの自治体向けにチャットボットの活用提案を予定しているという。

今後の展望

最後に、導入して間もないタイミングではあるものの、現時点で感じている課題や今後の展望を聞いた。

梶本氏梶本「利用者の方々の質問に、1から10まで答えてくれる万能なものとはまだ言えません。たとえば、最終的に聞きたいことは「税金がかかる最低収入は?」という質問であっても、「来年から子どもも手が離れるんで働こうと思って…」とか「いま夫の扶養に入ってるんだけど…」とか「もうひとつアルバイトを増やそうと思ってるんだけど…」といった、身の上話のような問いかけには、まだうまく回答できないですね。そうした質問の仕方、聞き方が分からない人たちにたいしても、うまく「こういうことが言いたいんだな」といったことまで想像して回答できるようになると、もっと利用者の方々の役に立てるのではと思っています。」

福泉氏福泉「利用者の方々に信頼して使っていただくための課題はありますね。現場に入っていきなり仕事ができる人がいないように、チャットボットも教育が必要です。ウェブサイトは、時間が経てばそのぶん古くなるため品質が下がっていくのにたいして、チャットボットは使えば使うほどより賢くなっていくため、補完的な効果も期待できます。」

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